2020.06.22
濃厚なジュネの気配がたっぷり楽しめるちょっと仄暗い復讐系執着ラブ!『アンダースキン』有木映子【おすすめ漫画】
『アンダースキン』
仄暗い雰囲気の表紙に往年のジュネの気配を濃厚に感じて、引き寄せられるように手に取っていたBL作品です。期待を裏切らず内容もまさにそんな感じでした。背徳感をくすぐられる、萌えとは少し違う高ぶりを楽しめるのではないでしょうか。
カップリングは、政治家の秘書×その政治家の愛人です!
もう組み合わせから日の当たる場所を歩けない気配がムンムンに漂ってきてますね! もちろんBLなので、政治家は男、秘書も男、愛人も男です。お洋服を脱ぐのはみんな男!! カテゴライズするなら執着ラブでしょうか。さらに学園物でもないのに受が未成年です。
政治家の汚職を隠すために自殺まで追い詰められた男の息子が、父親の復讐のためにその政治家の愛人になってスキャンダルを暴露しようと奮闘する過程で、昔ちょっと親切にしてもらった秘書にそのことがバレてしまい、秘書も身体を使って黙らせようとしたところ、うっかりはまってしまう……というのが身もふたもない説明になります。
自分の息子の体を使ってまでお父さん、無念を晴らしてほしいだろうか……とちょっと親目線で遠い目になってしまいましたが、死人に口なしなので止めることはできません。
秘書側も、絶対に手を出してはいけない系の相手であることは十分承知していながら、魔が差したように美味しく頂いてしまい、そのままドツボにはまっていきます。最終的に、そのそもの原因の発端となった政治家は、同性の未成年の愛人を囲っていたスキャンダルも過去の悪行もまとめて表ざたになるのですが、秘書は自分がそれをリークしたことにして愛人を庇います。
とにかく最初から最後までうっすらスモークがかかったみたいな空気が漂う作品です。
立場的にも年齢的にもどことなく背徳感の漂うカップリングですが、BLらしくラストにはちゃんとしっかり両想いになってハッピーエンドなので、そこはご安心ください。ジュネだと最悪、どちらかがあの世に行ってしまう系のエンディングが待っているので、油断しているとメンタルやられちゃうんですよね……。
ちょっといつもとは毛色の違うBLを読んでみたいなーという方や、ジュネ大好き! な方にはたまらない作品だと思われます。肌色シーンは上品で控えめなので苦手な方でもそんなに気にならないのではないでしょうか。
作品全体が纏う独特の空気感を楽しんでいただければと思います。
©有木映子/海王社