2018.02.28
【日替わりレビュー:水曜日】『とっても優しいあまえちゃん!』ちると
『とっても優しいあまえちゃん!』
生きているだけで甘えさせてくれる、溢れ出すぎるバブみ
ネットで広まった言葉「バブみ」。年下の女の子から母性を感じる時に使う単語だ。と言われてもそんな機会に巡り合ったことある人は、まずいないはず。でも二次元でなら、少女が大人を存分に甘やかしてくれる。やったね。
バブみがどんなものかを知りたい場合は、『とっても優しいあまえちゃん!』(ちると/KADOKAWA)を読めば大体わかる。
マンションの隣の部屋に住む女子小学生・あまえちゃんは、いつもおにーさんの元を訪れてくる。マンガ家志望なのに絵も描かず、ろくに働くこともできず、メンタルが弱くて傷つきやすいおにーさん。そんな彼を、あまえちゃんは常に励まし、甘えさせる。
「大人だとか小学生だとか関係ないよ。大人だって小学生に甘えたいときあるもんね」というような歪んだセリフがわんさか出てくる。
あまえちゃんが作った料理を食べたら、抱きしめて褒めてくれる。
プールで顔を水につけたら、いっぱいよしよししてくれる。
人生ゲームでイヤなコマに止まったら、励ましてくれる。
おにーさんは、もうあまえちゃんなしでは生きていけない。「あまえちゃん好き~~~!!」
「バブみ」の萌えポイントと、成人男性の病理が描かれるこの作品。よく読むとあまえちゃん側に、さらに深い病みがあるのが見えてくる。
あまえちゃんの友人、まともちゃんがおにーさんのダメっぷりを更生すべく、マンガの訓練を施す回がある。
おにーさんは厳しくされたことで、あっという間に幼児退行化。それを見たあまえちゃん。崩れ折れたおにーさんに、激しくときめき「すっごくかわいい!!」「むしろこれからもやって欲しいなぁ…」。
おにーさんが頑張ると「ちょっと頑張り過ぎじゃないかな…」とストップさせてしまうあまえちゃん。
一見母性の塊っぽい彼女だが、ダメな人を甘えさせることで自らの幸せを感じるタイプの人間だ。
結婚したいと約束する二人の共依存関係は、ギャグなのかホラーなのか。
バブみ、怖い。
©ちると/KADOKAWA