コミスペ!

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2018.02.20

【日替わりレビュー:火曜日】『サマータイムレンダ』田中靖規

『サマータイムレンダ』

(今日は火曜日担当・かーずさんがお休みのため、日曜日からの出張で、コミスペ!編集部がお届けします。)

今回ご紹介するのは、『サマータイムレンダ』(田中靖規/集英社)。WEBマンガサイト「少年ジャンプ+」で連載中の、SFサスペンス作品です。

『ジョジョの奇妙な冒険』の荒木飛呂彦を師と仰ぎ、アシスタントには『僕のヒーローアカデミア』の堀越耕平が就いていたという過去を持つ本作の作者・田中靖規。正直なところこれまでにヒット作には恵まれていなかったというのが率直な印象ではありました。

しかし、この作品は素晴らしくおもしろい。名作になる予感がぷんぷんします。

幼馴染の小舟潮が死んだという報せを聞き、故郷の和歌山市・「日都ヶ島」に帰ってきた慎平。潮の実妹・澪との久しぶりの再会を経て、葬儀は執り行われていく。
しかし、潮は事故死だったと聞かされていたが、潮の死には他殺の可能性があると伝えられる。そんな中、怪しげな老人から「影を見た者は死ぬ、影に殺される」という、この島に伝わる風土病「影の病」の存在を知る。訝しげな慎平に対し、澪は潮の死ぬ3日前に、確かに2人の潮を見たという…。
「影の病」のことを調べるために向かった神社の側で遭遇したのは、澪に拳銃を突きつけるもう1人の澪だった。驚く慎平に対しても容赦なく発砲。しかし、死んだはずの慎平は、目が覚めると「日都ヶ島」に帰ってくる船に乗っていた…。死ぬまでの記憶が残ったまま、7月22日を繰り返している慎平は、潮の死や「影の病」について明らかにするべく、この謎に立ち向かっていく。

まず、「ループもの」といえば、『涼宮ハルヒ シリーズ』『シュタインズ・ゲート』『Re:ゼロから始める異世界生活』など、これまでに新旧の有名作品でも多用されてきたフレームワークで、安易に手を出せば過去作の参照を食らって自爆する可能性もある、というもはや扱いづらい印象のある設定。またループすることにより、同じ情景を繰り返しがちなので、お話の流れが冗長にならないように気も遣わなければいけません。

確かに本作の大きな軸としては「ループ」があり、「影の病」のモンスター表現といった要素によりファンタジックな側面が色濃く印象に残るのは間違いありません。
しかしこの作品が持つ大きな魅力は、表面的な枠組みではなく、より根幹の部分であるキャラクター描写にあります。

ヒリつくような緊迫感のある表情や、あえてミスリードさせてるのではと勘ぐりたくなるような繊細な心理表現が絶妙で、一見突飛になりそうなSF設定で読者を置いていくことなく、土台として見事なサスペンスへ物語を昇華させていることが、この作品をイロモノに感じさせていないポイントです。
そして緩急付けたコマの使い分けや、丁寧な背景の描き込みといった、経験に裏打ちされた確かな画力も、この作品自体の説得力を増す底上げをしています。

また、本作では盛り上がりにかけて場を繋いでいく「テンポ感」が見事。極上のサスペンスのドキドキ感を保ったまま、物語を進行させることに成功しています。
結果として、まるでループ・サスペンスの名作『僕だけがいない街』の1巻を読んだ時と同様、ページをめくる指が早まるような猛烈な高揚感「続きを読みたい!」と読者に思わせる求心力の強さを、読後感に残してくれてるのです。

また、「金髪ハーフ幼なじみ」「セーラー服短髪褐色妹タイプ」「黒髪巨乳メガネお姉さん」など、物語に関わる女性キャラのキュートな造形も素晴らしい。
個人的には、慎平の幼なじみ・菱形窓の妹、朱鷺子がグッドです。目が細くいつもは閉じて見える大人しそうな彼女ですが、「慎平が澪のお風呂を覗いたのではないか」と、ちょっとえっちな話題を頑張って慎平に問いただすときの、恥ずかしがりながらカッと目を見開いて話す描写、ぐっときました。

こういう、各キャラクターの性格を言葉で補足せずとも画で伝えきっているのは、読み進めていく中で読者にストレスを与えないので、テンポ感が重要な本作にとって大きくプラスに働いています。

「影の病」とは何か。「船の中で出会った女」は何が目的か。「潮」は本当に死んでいるのか。
1巻では、まだまだ謎が深まるばかりですが、ここからどういう風に進んで行くのか今後にとても期待が高まります。

『ゴールデンゴールド』『鬼燈の島』など、こういった閉鎖的な島を舞台にしたサスペンス・ミステリーものが好きな方はぜひチェックしてみてください!

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