2020.08.03
人間×鬼の浮世離れした恋物語が楽しめる、異種間恋愛ファンタジー&子育てBL!『紅椿』三田六十【おすすめ漫画】
『紅椿』
時代ものの異種間恋愛ファンタジーBLであり、子育てBLでもある本作。
カップリングとしては、「人間×鬼」という組み合わせになります。
赤い髪と薄茶の目という、周りとは違う外見から村八分のような扱いを受けている男は、ある日、人食い鬼が出るといわれる山の中で、へその緒が付いたままの鬼の子を拾います。
どうやら母親に産み捨てられたらしい鬼の赤子は、放置したら死ぬことは目に見えていました。それを待ち構えているカラスを見て、男は鬼の子を拾って育てることに決めます。
紅色の椿の下にいたことから小鬼に「アカ」と名前を付け、ひっそりと子育てをします。額に角があり、手足には鋭い爪がある鬼の子ですが、幸い男は村からかなり外れた場所に住まわされていたので、村人には変わった親戚の子を預かっているということでなんとか納得してもらうことができていました。
しかしアカは人間ではありません。鬼の子です。
アカは3歳になっても人の言葉を喋らず、やがて山にいる生き物をその鋭い爪で狩って生のまま食べるようになりました。自分が育てている子はやはり人にはなれない……。と、男は10年育てた鬼のアカを山に返すことにしました。
返したものの、やはり忘れることもできず、アカを探してしまいます。そして数年後、美しく成長したアカに再会し──魅入られてしまうのです。
育てて山に返した鬼に惚れる男。その鬼に命を助けられて、今度は死ぬ間際まで愛した鬼に会えなかった男。
これものすごく評価というか、感じ方が分かれる作品だと思います。
拾って途中まで育てた子を、手に負えなくなったからと山に捨てたというのに、好みに育ったのを見つけて今度は性的に手を出した最低の男とみるか、自力で食糧調達ができる=ひとりで山でも生きていけるということで、人間の枠に押し込めることなく鬼らしく生きられるようにと解き放って、その後、再会してお互い恋に落ちたとみるか、という感じです。
最後はちゃんとハッピーエンドなので、悲恋の覚悟は不要です。
鬼の生態が詳しく書かれていないので鬼の独り立ちがいつなのかなどはわからないのですが、個人的にはファンタジー作品ですし後者の解釈で楽しめました。自分が育てた、しかも人ではない鬼の子に恋をするという、二次元だからこそ許される二重の背徳感に一緒に萌え浸ろうではありませんか!
©三田六十/双葉社