2020.08.28
アラサー独身女子とノラ猫の神様が繰り広げる、痛快毒舌4コマ!『サチコと神ねこ様』wako【おすすめ漫画】
『サチコと神ねこ様』
wako先生の『サチコと神ねこ様』の第4巻が発売されました。
女性向けポータルサイト「pouch」で1日1話掲載される4コマ漫画を書籍化したもので、掲載開始は2014年。こうしてみると、なかなかの歴史を感じます。
物語の主人公は、とある企業で理系のお仕事に就くアラサー独身女子・サチコ。酒とタバコとお金が大好きで、恋愛からは久しく遠ざかっており、おひとり様をど真ん中で行くような暮らしをしています。そんな彼女の前に、ある日突然ノラ猫の神様が「恩返しをするためにやってきた」と現れ、何故だか一緒に暮らすように……というストーリー。
ファンタジーあり理系ネタあり
ものすごくライトに読める作品なんですけれども、こうしてレビューを書こうとすると結構色々な要素が詰め込まれていて、端的に「こういう作品です」って表すのが難しいんですよね。
アラサー独身女子の拗らせっぷりや、理系人間の生き辛さを面白おかしく描くときもあれば、理系的視点で世の中のトレンド(水素水とか)を斬ったり、ノーベル賞をはじめとした理系トピックを解説して知識欲を刺激したりしたかと思えば、純朴な神ねことのほのぼの(時に殺伐とした)日常を描いたり、さらに行くところまで行くと妖狐が出てきたりします。ものっすごくファンタジー要素もあるよっていう。
猫の神様というめちゃめちゃファンタジーな存在が、そういったものとはもっとも縁遠い理系女子と合わさって、なんとも奇妙でガチャガチャした物語となっています。
これが普通のストーリーものだといびつで読みづらい作品になりそうなのですが、本作の場合は4コマでキッチリストーリーを切っていけるので、そういった要素の多さが”引き出しの多さ”に直結。なんとも幅広いネタを楽しむことができるようになっています。
個人的には理系ネタが好きなんですけど、人によっては神ねことの絡みが好きだったり、恋愛ネタが好きだったりとかあるんでしょうね。
乱されたくないサチコと乱す取り巻き
主人公のサチコというのが、酒とタバコとお金が大好きというところからうかがえるように、現実主義で擦れていてとにかく辛口。世間や同僚を鋭い切り口で斬っていきます。神ねこに対しても厳しく、普通に家事をさせてます。加えて全然褒めたり甘えさせたりしないっていう。
猫との暮らしを描いた作品というのは、とりあえず癒しと感動で構成されているというのが相場ですが(偏見)、本作の場合、特に序盤に関しては感動要素は体感で2%ぐらい。こんな猫マンガあって良いのか。
さて、この2人だけを切り取れば、サチコが完全に主導権を握っており、絵面にもさほど動きがないのですが、その脇を個性的な面々が固めて物語を引っ掻き回します。とにかく猫を溺愛する同僚だったり(愛が強すぎて逆にウザい)、もう一匹の神ねこだったり、サチコとは腐れ縁のオネエの坊主だったり、勢いがものすごいガテン系の弟だったり、そんな弟に恋した狐だったり、もう濃い濃い濃い濃い……。
そんでもって彼らの巻き込み力がものすごく、ひとたび動けばサチコにトラブルが訪れるような感じに。結果、物語が進むごとにサチコにとってアンコントローラブルな事柄が増え、サチコの様々な感情を垣間見ることができるようになっていきます。そこをサチコが、サチコらしい捻くれたやり方で切り抜けていくのがまた痛快なのですよ。
pouchで掲載されている作品がすべて収録されているわけではなく、おそらく版権やページ数の関係から、漏れているものもあります。WEBで追っていると結構トレンドをとらえているネタも多いイメージがあるのですが、単行本で見るとそこまで強く時流を感じさせるネタは見られない印象です(まあ冒頭から、「割烹着のあのリケジョ」とかいうネタをぶっこんできたりはするんですが)。
WEBで読めるならそっちでいいじゃんって話になりそうなものですが、実は本作、単行本化は2回目だったりと、確実にニーズがあることが伺えます。私はWEBでも単行本でも両方楽しんでますが、まとめて読むなら俄然単行本なんですよね。Amazonのレビューとか見ても、WEB読んでるけど単行本も……という人がとても多いです。
猫好きにも、アラサーにも、理系にも、社会人にもきっと刺さるはず。あなたがどれか一つでもあてはまるのであれば、読まない手はありません。まずはWEBでもためし読みでも読めるのですから、百聞は一見に如かず、さっそくそちらをチェックチェック!
©wako/祥伝社