2020.10.07
どんな願いも叶えます、3ページだけ。ページ数限定のメタコメディ!『願いを3ページだけ叶えてやろう』大宮宮美【おすすめ漫画】
『願いを3Pだけ叶えてやろう』
どんな願いも叶えます、3ページだけ。ページ数限定のメタコメディ
3ページ。絶妙すぎる分量だ。
マンガの構造で考えると、見開き2ページで収まるなら1ページ蛇足になりそうだし、4ページだったら起承転結がつくけど3ページだと微妙にものたりない。そこがこの作品の「願い事」の内容を、独自なテンポで面白くする最大のエッセンスになっている。
この作品は極めてシンプルな構造の4ページマンガだ。最初の1ページは魔法のランプを手にした人間が、ランプの魔人を呼び出すページとして割かれている。彼女の能力は残り3ページ分願い事をなんでも叶える、というもの。
肝になるのは「3つ叶える」ではなく「3ページ以内ならなんでも幾つでも叶える」という非常にメタ的な、マンガならではの契約だということだ。
たとえばとある女子学生がランプの魔人ムニールを呼び出した時、1ページ目で「願いの数っていくつでもいいの?」と確認を取っている。ムニールは「ただしページ内に収まる分だけじゃぞ」と返答する。
つまり3ページに収まるなら1個でも何百個でもいいということになる。
女子学生はものすごい大量に、願い事をした。美味しいものを何でも食べたい、イケメンハーレムがほしい、海外旅行に行きたい、アイドルになりたい、結婚したい、宇宙に行きたい、異世界転生したい、などなど。
これを3ページでおさめるとなった時ムニールが取った手は、1ページに100コマ描き込み、そこに彼女の夢を全部詰め込んで叶える、というウルトラC。
忙しすぎて何が起きているかはわからないが、契約通り叶ってはいる。これが魔神の3ページ万能の力。
一方で疲れ果てたサラリーマンは息も絶え絶えに「寝るだけで大丈夫です」とムニールに告げる。結果残りの3ページただサラリーマンが寝ているシーンで終わる。女子学生とサラリーマン、願いの量も質も違えど、3ページだという点においては公平だ。
3ページ目が大駒でオチになることもある。3ページ目が駆け足展開でばっさりぶったぎって終わることもある。冒頭の1ページを含んだ4ページマンガとして見るなら「起承転結」、願い事3ページ部分だけで見るなら「序破急」。非常にトリッキーな展開の回も多い。
マンガとしての構造がかなり計算されているからこそできる内容なので、非常に読みやすい。魔人も徐々に増えて、バリエーションにも富んできた。
メタコメディをさらにメタ化する、17ページマンガも収録されている。どういうページ配分かが最大のネタなので、これはぜひ手にとって読んでいただきたい。
©大宮宮美/マックガーデン