2020.10.13

劇場アニメ製作中の人気シリーズ4作目は、小悪魔新人女優の一筋縄ではいかない成長譚!『映画大好きカーナちゃん』杉谷庄吾【人間プラモ】【おすすめ漫画】

『映画大好きカーナちゃん NYALLYWOOD STUDIOS SERIES』

2021年3月19日に劇場アニメの公開も決定している『映画大好きポンポさん』。これを皮切りはじまった「NYALLYWOOD STUDIOS SERIES」の単行本も、ついに4作目が発売されました。

今回の物語は、3作目『映画大好きフランちゃん』にも登場したフランちゃんの後輩、カーナちゃんが主人公。そしてカーナちゃんのスター女優への道のりは、真っ直ぐな頑張りで夢を掴んだフランちゃんとは、ひと味もふた味も違っていたのでした。

小悪魔新人女優の、知られざる胸のうち

前作『映画大好きフランちゃん』では、小悪魔的な可愛らしさと、時折見せる優しさが印象的だったカーナちゃん。けれど、そのキャラクターは彼女が持つ多面性のうちのひとつに過ぎなかったようです。

演技教室の先輩であるフランちゃんがスター女優になったことで、彼女の存在が遠くなってしまったと感じているカーナちゃん。大好きなフラン先輩と並んでも恥ずかしくない自分になりたい。そんな理由から、自分はどうすればスターになれるのか、真剣に考えはじめます。

しかしカーナちゃんは、良くも悪くも“周りが見えている”女の子。それは人目を気にしながら振る舞っている、ということにも繋がっています。学校では面倒事に巻き込まれないように地味で目立たない人間を演じていると明かされる冒頭部分が、そのことを象徴していると言えるでしょう。

フランちゃんのように根拠もなく夢を追い続ける純粋さは持っておらず、そしていまの自分のままでは誰もを釘付けにするスターにはなれっこないことだけは自覚している。そんな、カーナちゃんの小器用だからこその葛藤が、本作では描かれます。

カーナとデュラント、どこか似ている2人のドリーマー

そんな中、カーナちゃんはある男性と運命的な出会いを果たすことに。彼女が出会ったのは、映画のリアリティを高めるための仕事である科学考証家をしているデュラントという男。

本当は脚本家として「最高のSF映画」を作りたい……けれど、人を楽しませるための術は知らないデュラント。彼もまた、頭でっかちで理想を実現する方法が分からないでいる、という点ではカーナちゃんと似たもの同士です。

夢も境遇も違う、けれど少し似ている2人のドリーマーは、互いの夢を現実にするため、手を取り合うこととなるのです。

ひとりひとりに、自分だけの輝き方がある

もちろん今回もシリーズの顔、映画プロデューサーのポンポさんも大活躍。彼女ならではの、強引ながら核心を突く言動・行動で、カーナちゃんとデュラントを導きます。

ほかの新キャラクターたちもそれぞれが映画製作に対する熱い想いを抱えており、ものづくりや表現を志す者にとってはグッと来る台詞が目白押しです。彼らの情熱は時にぶつかり合い、せめぎ合いながら、やがてひとつの作品という結晶に……。この大きな流れの興奮と感動は、流石はこのシリーズといったところ。

加えて本作ならではの魅力は、やはりカーナちゃんの複雑な人物造形にあると言えるでしょう。彼女の女優としての開花の仕方は、前作のフランちゃんとは全く違っていて。人が輝く方法に、誰にでも当てはまる“正解”なんてない──自分だけの答えを見つけるしかないのだということに、改めて気付かされます。

本作『映画大好きカーナちゃん』だけでストーリーは完結しているので、過去作を読んでいなくても楽しめる……のは間違いありませんが、前作『映画大好きフランちゃん』と併せて読めば、シリーズの持つテーマに、より深く感じ入ることができるはず。

そしてこれを機に、映画への夢と情熱をめぐる熱き物語が紡がれる、「NYALLYWOOD STUDIOS SERIES」の世界に、足を踏み入れてみてはいかがでしょう?

この記事を書いた人

小林 白菜

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