2020.11.27
魔性的美貌を持ちながらも、幼い頃から目立たないように過ごしてきたいじめられっ子が歌舞伎の世界で輝いていくヒューマンドラマ!『毒と花道』たしろみや, 猶本三羽【おすすめ漫画】
『毒と花道』
たしろみや先生、猶本三羽先生による『毒と花道』の第1巻が発売されました。それではさっそくあらすじからご紹介。
いじめられっ子が歌舞伎の道へ
幼い頃から顔を隠して生きるよう育てられてきた佐伯瑞希。その女顔と女々しい振る舞いによって周囲から孤立していたが、ある日歌舞伎役者・旦原三四六と運命の出会いを果たす。「君の個性は歌舞伎で活かせる」と告げられた瑞希は……。
表紙でなんとも独特な格好をしているのが主人公の瑞希。普段はメガネをかけ、前髪を長めにいつもうつむきがちで、とにかく目立たないよう過ごすことを心がけています。その女っぽさから幼いころからクラスではいじめのターゲットにされ、さらには何かと昔から、大人から誘拐されそうになったりいたずらをされそうになったりと危ない目に遭ってきました。
親とは死別し、親戚に引き取られるも疎まれて育つなど、周囲には味方が誰一人おらず、自分の居場所が無い状態。そんな絶望の只中で、たまたま歌舞伎役者・三四六にその才能を見出された瑞希は、すがる思いで彼に弟子入りを嘆願。
歌舞伎への道に足を踏み入れることになります。
魔性的美貌の持ち主
三四六に見出された瑞希の才能とは、その圧倒的美貌。その気がなくても、顔を見たもの全てを虜にする圧倒的美貌の持ち主で、昔から何かとトラブルに巻き込まれがちだったのは、その魔性的な美しさゆえ。
親族もそのことを知っていたので、顔を隠して目立たないよう生きるよう強く言いつけていたという経緯がありました。私生活において、そのクラクラするほどの魔性の美貌というのはマイナスでしかないのですが、それが歌舞伎の舞台ではこの上ない強みになるのです。
弟子入りして早々に代役で舞台に上がると、その美しさが話題になるものの、セリフ回しは素人そのもの。このままでは使い物にならないので、稽古を重ね、少しずつ歌舞伎役者としての力をつけていくことになります。
しかし歌舞伎の世界は独特の慣習がいくつもあり、また関係者もひと癖もふた癖もある個性派揃い。これまで目立たぬようおとなしく生きてきた瑞希からしたら、居場所を見つけたとはいえ生き抜くのはなかなかに大変。日々壁にぶつかりながら、泣きながら必死に食らいついていきます。
意外とコミカルで読みやすいです
いじめられっ子の逆転劇に、歌舞伎界の荘厳な雰囲気が相まれば、そりゃあ熱く骨太な物語が展開されそうな感じがしますが、本作が纏う雰囲気はどちらかというと「コミカル」。
瑞希の師匠にあたる三四六がおちゃらけた雰囲気の数寄者で、さらに女形役者のオネエっぷりが強調されていたり、瑞希自身もオロオロワタワタして落ち着きがないなど、なんか全体的に軽く、非常に読みやすい作品になっております。
既に強力な武器を持っており、どう転んでも死ぬことはなさそうな状況ではあるので、純粋にここから瑞希の成長を見守るとなると単調になってしまいそうな予感も。おそらくもうひと山ふた山、大きな障壁が登場してくるものと想像していますが、どう盛り上げていくのか。
タイトルで「毒」というワードを使っているくらいですから、強烈なストーリー展開となることを期待したいと思います。
©たしろみや, 猶本三羽/白泉社