2020.12.19
狼男の血を引く少年と、同級生のツンデレ女子が繰り広げるキュートなわんこコメディ!『オオカミくんは早川さんに勝てない』はれやまはれぞう【おすすめ漫画】
『オオカミくんは早川さんに勝てない』
本日は、新潮社「くらげバンチ」で配信中の『オオカミくんは早川さんに勝てない』を紹介したい。
ある学校に、ひとりの転校生がやってきた。名前は尾上ハヤト。性格は内気で、勉強もスポーツもあまり得意ではない少年だ。
気付けばクラスで地味な奴として軽んじられるポジションに収まったハヤトだが、彼には自分が周囲の誰より特別な存在だというプライドがあった。
その自信の根拠は、ハヤトの血筋がもたらす異能。オオカミへの変身能力である。
野性を解放すると全身がふさふさと毛に覆われ、ぴんと耳が立ち、口には牙が並び、四足歩行の獣へと体格が作り替わる……! またたくまにオオカミへ化けたハヤトは高らかに吠えながら、憂鬱な学校を飛び出して町中へと駆けだしていく。
そして、威風堂々と疾走するオオカミを目撃した人間は指さしてこう言うのだ。
「あ! わんこだ!」
ってイヌじゃねーか! いやイヌ科だけども!
そう、変身後の姿はオオカミと言いつつも見た目ゆるキャラばりにまるっこい、事実上のイヌ。学校ではバカにされがちなハヤトくんだが、わんこになると通りがかった人たちからチヤホヤされ、食べ物を与えてもらえる楽しい時間を満喫できるのだ。
そんな折、わんこハヤトは大いなる脅威と遭遇する。それはクラスメイトの早川ユキという女子である。学年トップの優等生だが出来の悪いハヤトを何かといえばバカにしてくる、イヤなやつだ。
おのれ、どうやって自分の縄張りから追い出してくれようか……と考えていたところ、ハヤトにとって予想外の展開が。
「かぁいいね〜! お…お名前何ていうの〜?(ハァハァ)」
なんと早川さん、無類の動物好きだったのだ。目の前のわんこが尾上ハヤトだとは知らぬまま大興奮でなでまわし、顔をうずめてにおいを嗅ぎ、母犬がするように鼻先を口でくわえるなど、大胆スキンシップの数々で迫ってくる。どうしよう、大嫌いな相手のはずなのにドキドキが止まらない!
さてさて、各々違う意味でヒミツの姿をもった少年少女の非対称な関係は一体どう転がっていくのやら……?
というのが本作の大枠となる。
オオカミ男を題材にした作品は古今東西さまざまな切り口があるが、本作の場合は「(ほぼ完全な)イヌになって可愛がられる」という、半獣半人の悲哀みたいな方向からはズラしたところでコミカルな趣を出している。いじわるな顔しか見た事のなかった女子からデレっデレの表情で甘やかされる体験の、極端な落差が見どころ。
変種のツンデレとしてヒロインが可愛いというのもあるし、そういうヒロインに思うさま翻弄されるわんこ少年のうろたえっぷりが可愛いというのもあり、ひとつのシチュでつねに両面的な楽しみを得られるだろう。
当レビュー執筆時点の最新話では、そろそろ人間のハヤトとわんこハヤトを早川さんが関連付けるかどうかという段階にさしかかってきた。早く二人の仲が進展してほしい気持ちと、ヒミツを抱えたまま早川さんに愛でられるエピソードをもっと見たい気持ちとがせめぎあってなかなかの読者泣かせである。
なお、単行本は第1巻が2020年12月9日に発売されたばかりで、配信クローズになった回はそちらでまとめて読むことができる。
©はれやまはれぞう/新潮社