2020.12.22
FGO『虚数大海戦イマジナリ・スクランブル』のライターが原作の、「こっくりさん」をモチーフにした不条理なデスゲーム!『こっくりマジョ裁判』amphibian, 中山敦支【おすすめ漫画】
『こっくりマジョ裁判』
ケムコ在籍時に名作『レイジングループ』などのシナリオを手掛け、フリーになってからは『Fate/Grand Order』の期間限定イベント「虚数大海戦イマジナリ・スクランブル ~ノーチラス浮上せよ~」のシナリオも担当したゲームシナリオライター・amphibian氏といえば、アドベンチャーゲーム好きのゲーマーならばご存知かもしれません。
そんなamphibian氏が原作、中山敦支氏が作画を手掛けた漫画が『こっくりマジョ裁判』。
「こっくりさん」をモチーフにしたデスゲームが予想外の展開へと発展していく、1巻完結の快作です。
“バグ利用”で有名なゲーム配信者が、命を賭けたゲームに挑む
気づくと暗い部屋でひとつの机を囲んでいた6人の少女。そして彼女たちの左手の人差し指は机の上にある5円玉に添えられ、何故か離すことができなくなっていたのでした。5円玉の下には50音表や「はい」「いいえ」といった選択肢が書かれた紙。
どうやら“コックリさん”をするときと酷似した状況であることに気づいた6人は、やり方を思い出しながら、コックリさんに対して質問をしていくのですが……?
やがて彼女たちは、それがコックリさんを模した、互いの秘密を探り合う“デスゲーム”であることに気づきます。それぞれが自分の秘密が書かれた3枚のカードを持っており、3枚すべての秘密が暴かれた者はむごたらしい最後を迎えてしまう……。
しかしそれだけでは、このゲームが仕組まれた理由や、至るところで感じる違和感までは説明がつかない。
6人のうちのひとり“結城マチ”は、ネットゲームの対戦で、バグや裏技を見つけて利用して勝つことで悪名高いゲーム実況者「ばぐまじょ」というもうひとつの顔を持っています。彼女は自分の命を奪おうとする敵対者と頭脳戦を行いながら、このゲームに無数に仕込まれた“バグ”を探ってゆくのでした。
マチ以外の少女たちの中にも常軌を逸した二面性を持つ者が紛れており、ゲームのルールを普通に守ろうと思ったらするはずのない行動に出る者も。さすがのばぐまじょも苦戦します。
その戦いはキャラクターたちの誇張された表情や過剰気味な行動、躍動感溢れるコマ割りなどが合わさって、説明の多い作品にも関わらず異様なスピード感があります。そうして繰り返されるどんでん返しに次ぐどんでん返しで、グイグイストーリー展開に引き込んでいく手腕もお見事。
そんなスピード感と勢いを重視した展開の結果か、本編内でははっきりと説明されないままの設定もちらほら。けれどこの辺りは、登場キャラクターたちがメタな視点から本編を語っていく、巻末のおまけページで解説が行われます。
『レイジングループ』のプレイヤーとしては、各種エンディングに到達したときに読めた、マスコット的キャラクターによるメタ解説が思い出される手法です(起源を遡れば『Fate/stay night』の「タイガー道場」でしょうか?)。
作画のパワーによる漫画ならではの躍動感・スピード感と、ゲームシナリオ仕込みの手法が融合した面白さを持つ本作。amphibian氏・中山敦支氏両名のいずれかの作品のファンならぜひ味わってみていただきたいですし、1巻で完結という読みやすさは両氏の作品の入門編としても最適です。
最後に、本作はなかなか激しい暴力・スプラッタ表現が多く、また直接的に描かれるものは少ないものの、性犯罪を連想させる描写がいくつか登場します。これらが苦手な方はご注意の上、読んでみるかどうかをご検討ください。
©中山敦支,amphibian/集英社