2021.01.22

元カノへの未練を引きずって「恋愛」や「結婚」が遠のき、気づけば10年彼女がいない、向井くんが織りなすラブストーリー!『こっち向いてよ向井くん』ねむようこ【おすすめ漫画】

『こっち向いてよ向井くん』

ねむようこ先生の新作『こっち向いてよ向井くん』の第1巻が発売されました。

まずはあらすじをご紹介しましょう。

こんなあらすじ

実家暮らしの会社員・向井くん(35)は、気づけば10年彼女がいない。最後の元カノ・美和子には、「守ってあげたい」と囁いたら「守るって何?」と詰められフラれた。元カノへの未練を引きずって”恋愛”や”結婚”が遠のいていた向井くんだが、派遣社員の中谷さんが可愛く思えてきて……? 元カノと新たな出会いの狭間で惑う、向井くんの恋愛まちがい探しスタート!

非モテ男子の話ではないのです

というわけで、今回の主人公は男性でございます。35歳で10年彼女がいないというプロフィールを見ると、いわゆる非モテ男子を想像するかもしれませんが、いえいえ、普通に清潔感があって、人当りもよく、仕事もきっちりこなす好青年。なんなら面倒見も良いイイ男です。

ふと見ればモテるような気もするんですが、これがまあなぜか10年彼女がいない。もちろん、10年間で何もなかったわけではありませんが、振り返るとここ数年はそんなことすら一切……といった状況。

「あれ、彼女ってどうやって作るんだっけ?」といった感じの中、なんとなくイイ感じの女性が現れ、悩みつつ迷いつつ恋に踏み出すわけですが、10年のブランクは想像以上にやっかいで、いろいろと踏み違えてしまうというというお話。

とにかく刺さりまくる

漫画を読んだ後の感想って、色々な言葉が混ざりながら湧き出てくるわけですが、本作に関して言えばストレートに「刺さる」の一言。他の感覚は一切無かったです。

刺さるっていうのは、心に感動が直撃するとかそういうことではなくて、自身の古傷や恥ずかしいところをグサグサと刺されているような感覚になるってことで、まあつまるところ、いい意味で読むのが辛い。いや、ホント辛い。彼の恥ずかしい思考や、誤った決断のひとつひとつにどこか既視感を覚えると思ったら、「あ、これ自分だ」となる感じ。

他人に対してキッチリ線を引いて、はじめは勘違いしないように慎重に対峙していたのに、ちょっとした偶然や相手の言動に期待感膨らませてしまい、いつの間にかギアが入って、間違った方向に足を踏み込んでしまうこの気恥ずかしさ。

もうとっくに盲目的になっているのに、それに気づけず、自分は俯瞰的に状況をとらえられていると誤認しつつ、勝ち目のない恋愛ギャンブルをしてしまう、その心理状態。

恋愛経験ゼロならば、いっそ開き直って必死に食い下がることもできるのに、なまじ恋愛経験があるがために、変にスマートに(そして中途半端に)振る舞ってしまう、このどうしようもなさ。

そして何より、基本的に待ちの姿勢で、相手に対して線を飛び越えてアプローチをしようとしない無意識の臆病さ。

あれ、向井くんについて書いていたはずが、自分がダメージ食らってるぞなんだこれ。30代、既婚の私でこんな感じなのだから、まさに向井くんと同じ境遇に置かれてるような人は、読んだら死ぬんじゃないだろうか。

一方メインとなる女性読者に対してどう映るかなのですが、たぶん、ちょっとしたイケメンが、恋愛勘が鈍くていい年してから回ってるのが可愛らしい、愛でる対象としても機能してるんじゃないかな、と思います。これが本当にブ男だったら作品として成立していないはずで(そういうのは青年誌でやる)、重ね重ね、向井くんってキャラは絶妙だなと思わされるわけです。

むかいの喋り方

ちなみにこの作品、パンサーの向井慧さんのラジオ番組『むかいの喋り方』での発言に着想を得て、名前を拝借して生まれたマンガなのだそう。

(注:あくまで着想であり、向井くんのモデルが向井慧さんというわけではありません)

個人的な話で恐縮ですが、私、ラジオ番組『むかいの喋り方』を聴くためにradikoのプレミアムに入ってまして、まあこのラジオ番組が面白いんですよ。モデルではないと言いつつも、やはり向井慧的なエッセンスはところどころ落とし込まれているような気がして、どうしても2人を重ねてしまうという。

全くもって必要性はないのですが、この番組を聴いているとまた違った形で本作を楽しめるんじゃないかと思います。(つまるところラジオ番組もオススメしたい)

というわけで、全力で読者をぶっ刺しにくる『こっち向いてよ向井くん』、男子女子全方位にオススメでございます。向井くんに、真の「絶対キュンとしたじゃん」的シチュエーションが訪れることはあるのか、要注目です。

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