2021.01.26

『BEASTARS』作者による初の自伝的エッセイ! 「あの父親」ももちろん登場!『パルノグラフィティ』板垣巴留【おすすめ漫画】

『パルノグラフィティ』

現在TVアニメ第2期も好評放送中の漫画『BEASTARS』を代表作に持つ、板垣巴留先生。「Kiss」で連載された彼女による初の自伝的エッセイを1冊の単行本にまとめたのが、今回ご紹介する『パルノグラフィティ』です。

母と父、そして娘が3人という5人家族の末っ子として生まれた巴留さん。子どもの頃から、漫画家になった現在に至るまで──彼女が人生で経験した様々な出来事が、デフォルメされたタッチでコミカルに描かれます。

第1話冒頭で「私はすごく普通の人間」だと言い、どんなエッセイを書けば良いのかと悩む様子が描かれている本作。しかしそこは流石『BEASTARS』の作者。それぞれのエピソードの切り取り方、感じ方はユニークで、その着眼点の面白さ、洞察の鋭さたるや、やはり“普通の人間”で片付けるのは難しいものがある気がします。

どのおはなしも面白かったり、興味深かったり、「そんな考え方もあるのか!」とハッとさせられるものばかりなのですが、担任の先生への仄かな恋心や、成人式で再会した旧友たちの変わり様など、ちょっとほろ苦いエピソードもまた印象深く胸に残ります。第21話「サウスポーの神話」などは百合的に美味しくて個人的にお気に入り。

それから巴留さんといえば、父親は『刃牙』シリーズの作者である板垣恵介先生。自宅とは別にある仕事場に、巴留さんが幼い頃から籠もりがちだった(表紙の一家団欒に不在なのもそのため)ということで、出番はさほど多くないものの、彼ももちろんこのエッセイに登場します。

豪快ながらこだわりが強そうな性格は、作風から想像できる通りの人物像でありつつも、巴留さんにとってはしっかりと良い父親でもあったことがうかがえてほっこり。

そして巴留さんは父親と同じ漫画家になるわけですが、そうなるに至った所以は、むしろ父以外の家族の人柄にこそあった模様。巴留さんのちょっと変わった感性を決して否定しないお母さん。就活をやめる切っ掛けになった長女。そして幼い頃、ちょっとマセた“人形遊び”に付き合ってくれた次女。

これらのエピソードからは、巴留さんが創作の世界にのめり込み、自由に没頭できた理由が端々から伝わってきます。

おじいちゃんのキャラクターもすごく魅力的。家族全員への温かな目線が首尾一貫しており、帯や裏表紙の言葉通り、まさに「くすっと笑えてほろっと泣ける」漫画になっています。

『BEASTARS』の魅力に触れて、作者のパーソナリティに興味を持った方はもちろん、人との触れ合いが希薄になりがちないま、多くの方に読んでみてほしい作品です。

試し読みはコチラ!

この記事を書いた人

小林 白菜

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