2021.01.31

生前は北海道で銃をとり獣を追った若き猟師と、狩人のエルフのハンター夫妻が繰り広げる冒険譚!『北海道の現役ハンターが異世界に放り込まれてみた 〜エルフ嫁と巡る異世界狩猟ライフ〜』カルトマ,ジュピタースタジオ,夕薙【おすすめ漫画】

『北海道の現役ハンターが異世界に放り込まれてみた 〜エルフ嫁と巡る異世界狩猟ライフ〜』

さて、本日のピックアップはこちら。「小説家になろう」の投稿Web小説の商業書籍版をもとにコミカライズされた『北海道の現役ハンターが異世界に放り込まれてみた 〜エルフ嫁と巡る異世界狩猟ライフ〜』という作品だ。

主人公・シンこと中島進(なかじましん)は現代日本の北海道で銃をとり獣を追う若き猟師。人里へおりたヒグマから小学生を守って噛み殺されるという悲惨な死を遂げた彼は、その働きを見込んだ女神のはからいで洋風ファンタジー世界へ生前の姿と装備そのままで送られる。

状況に戸惑うシンが現地でオオカミの群れに襲われあわや二度目の死が訪れるかというところ、ひとりの異種族女性が現れてシンを救助、厚い手当てを施す。それは身体も心もたくましいエルフの娘、サランと名乗る狩人だった。

シンとサラン、お互い一目惚れしたうえ同じ職につく者同士の共感が響いた二人はスピード結婚をはたし、シンはエルフの村に己の居場所を見出す。エルフたちの恩に報いるため、また装備を維持する資金を得るため、シンは人間の都市へ渡りサランと共に銃を活かした狩猟業に着手。世界をまたいで結ばれたハンター夫妻の冒険譚が幕開ける──。

“実在する猟銃で異世界の獲物を倒す”というコンセプトを手堅くまとめており、主人公のもつアドバンテージと限界をバランスよく示して読者を引き込んでくる。

主人公は散弾銃(レミントンM870ハーフライフル)によって刀剣や弓を圧倒するハンティングが可能で、女神からもらった不思議なバッグにお金を入れれば望んだ品物が出てくるおかげで、銃弾の補給も出来る。また、異世界なので「人に銃を向けてはいけない」「××をむやみに狩ってはいけない」といった日本の銃刀法や鳥獣法に縛られることもない。

しかし逆に言えば強みは銃を撃てる──それも猟銃のみ──というただ一点。シン本人の身には特殊能力はつかないし、高火力の軍用武器が手に入ったりもしない。ちょっとは有利だけど、モンスターがいて魔法がある超自然の世界で生き抜くのはけっして楽勝ではない。そういうさじ加減が絶妙だ。

だから、劇中でハンターギルドに伝手をもうけたシンたちが請け負う仕事も、街に増えすぎたハトを撃ち落として駆除するという(世界設定のスケールに対して)慎ましいものだったりする。

原作の展開に沿うなら後々には魔物や大型生物とも対峙するはずだが、それでも“どんな世界でも仕事としてのハンターはこういうあり方”という一線は守られるだろう。言うなれば、異世界を舞台にすることで逆に現実の猟師を浮き彫りにするような趣向なのである。

コミカライズとしての本作の美点を挙げれば、やはり視覚的な分かりやすさ。銃撃シーンの緊張感や迫力は画に描かれてこそのものに仕上がっている。

また、劇中で使われる銃や銃弾の構造を説明したり、「現実ではこういう決まりがあるが、ここは異世界なのであえてこういう行動をとる」といった解説を挟むさいにていねいな図解が添えられているので、そこを読み込むだけでも学習マンガ的な楽しさが味わえる。

以下余談。
「小説家になろう」のWeb小説版では本作の原典の他に“もしもシンが死なず異世界の存在のほうが現実世界へ渡ってきたら”というパラレルIFを描いたスピンオフや、そこからのさらなるスピンオフでシンの祖父母の異世界転移を描いた外伝が書かれている。

そこまで節を広げてもなお上述したコンセプトはしっかり守られているあたり、原作者の書きたいものがはっきりしている作品の清々しさに感じ入るところである。

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miyamo

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