2021.02.07

コンビニ店員の女子高生がアルバイト中にゾンビウィルス災害が発生、救助までの100日間を店内で過ごすサバイバル(非)日常ホラー!『コンビニ・オブ・ザ・デッド 〜100日後に救助されるコンビニ店員』日野健太郎【おすすめ漫画】

『コンビニ・オブ・ザ・デッド 〜100日後に救助されるコンビニ店員』

アニメーター・日野健太郎先生が2020年9月下旬より2021年の正月にかけてTwitter上で連日更新した漫画『コンビニ・オブ・ザ・デッド 〜100日後に救助されるコンビニ店員』。その商業化単行本が1月28日に発売されたので、改めて注目しておきたい。

例のワニが巷で話題をさらった後、「100日後に〇〇」というタイトルを冠しつつ独自の内容からなるWebマンガが巷にいくつか創作されている。なかでも完成度の高さで特筆に値する作品がこちらだ。

大筋は題にあるとおり。都市部にあるコンビニ店員の主人公・女子高生「ひの」ちゃんがアルバイト中にゾンビウィルス災害が発生、救助までの100日間を店内で過ごすサバイバル(非)日常ホラーである。

もしも世界にゾンビがあふれたら、こういう場所でこれこれこういう風に立てこもる。そんな空想に耽る人は多いときく。かくいう私も夜眠る間際にによくやりますが。

そのさい、舞台選びはさまざまだ。住宅、病院や学校、ショッピングモール、廃墟……あるいは、そう、コンビニエンスストアも。食糧や物資があるていど潤沢で、インフラが生きているなら水道や電気も使える。バックヤードや平らな屋上をもつ構造も勝手がよい。考えてみればコンビニは少人数の生命維持にうってつけの大きなセーフルームなのだ。

本作『コンビニ・オブ・ザ・デッド』はそうしたゾンビ禍世界におけるコンビニの機能性を具体的に描いてみせる。上に述べた空想に耽るタイプの読者は「そうそう丁度こういうのが読みたかったんだよな〜!」とイメージに明確な形を与えてもらう体験を味わえることだろう。その意味では、コンビニ店内の“あるもの”をお風呂の浴槽代わりに使う場面が本作のビジュアル上のハイライトのひとつに挙げられよう。

非日常的な寝食という点では、極限サバイバルと趣味のキャンプは背中合わせの裏表だ。そのふたつを分かつのはもちろん、安全性とストレスの度合い。本作が高い完成度をもつと述べたのは、独りきりで過酷な状況をやりすごすストレスもきめ細かく描き込んである抜かりなさゆえだ。

寂しすぎて不安定になる情緒と言動。味覚の変調。自分はよく頑張っている、と自分に言い聞かせ続ける少女の心身両面ギリギリのふんばりを一日ひとつの出来事を介して見守る緊迫感は、100日連載スタイルが題材と非常にうまくかみ合ってすぐれたリズムを生んでいる。

連載スタイルによる趣といえば、読者と登場人物の様々な情報ギャップが底に仕込まれていることを、じわじわ示唆していく構成の巧みさにも注目したい。
序盤のうちは100日後の救助という未来を予告されている読者が、一介の女子高生の四苦八苦を上から見守るような形だが、18日目あたりから様相が変わってくる。

えっ、この作品の時代設定ってそうだったの?
ひのちゃん、器具のあつかいや改造が上手すぎない? なんでそんなもの作れる技術があるの?
たまに口走る言葉がえらく理知的だなぁ。地頭がいいとか学校の勉強ができるというレベルを越えて……。

と困惑させられつつ日数が進むにつれ、読者は悟ることになる。我々は物語の結末だけは知らされているし、ゾンビ物の色々なお約束もふまえている。しかし代わりに、目の前にいる主人公についてだけ何も知らない。

コンビニ店員女子高生・ひのちゃん。この子いったい何者なんだ……!?

そんな具合に、明快なワンシチュエーションが主人公を媒介に底知れない奥行きをもうける流れがお見事。最初から最後まで飽きさせないという言葉がぴったり当てはまる仕立てになっている。

なお、上の疑問への答えは、世界にゾンビウィルスが蔓延した理由もふくめて最後の最後でほぼ察せられるのでモヤモヤは残らない。気になったらぜひ実際に読んで見届けてほしい。

このマンガを読んだ後には、近所のコンビニに行くたび「自分ならここでこう……」と臨場感をもった空想が捗ることうけあいだ。

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miyamo

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