2021.02.15
独占欲の強い人間の王族×美しい獣人の、愛と癒しにあふれた美しく素敵なファンタジーBL!『花の皇』九重シャム【おすすめ漫画】
『花の皇』
戦火で土地を荒れ果てさせた人間と、荒れて病んだ土地に緑を芽吹かせることができる獣人のお話。絵とストーリーを両方愛でられる美しいファンタジーBLです。
カップリングは、「独占欲の強い人間の王族×美しい獣人」となっております。
枯れ果てた国を治める王は、命を植物に変えることができる獣人一族に助けを求め、獣人の王はこれを受け入れました。獣人の息子・ダラフと人間の王の息子・ミスラは、まだ幼い子供の時に獣人たちが暮らす深い森で出会い、荒れた国に共に向かい、復興に力を注ぎます。
王族自らが土を耕し、民のために働き、ダラフは人と異なった姿かたち、能力を恐れられながらも人に寄り添って、人間の土地に緑を蘇らせていきます。
そんな生活の中で、王は末の息子・ミスラに女っ気がないことを心配し、相談を受けたダラフが女性に興味を持つよう話をしに行くも、どこでボタンを掛け違えたのかオスの自分がミスラの腕に抱かれるという展開に。最初に挑発して性的に触れることを許したダフラは、それからずっとミスラに抱かれ続けます。独占欲の強いミスラは、子供のころから一緒にいるダラフを絶対に離しません。
微妙に気持ちがすれ違っている両片思いなのですが、基本的にとても良い子たちなのであまり激しいことにはなりません。気持ちが通じ合わないまま身体を重ね続け、通じた後も重ね続けるものですから、両思いになる前と後でそこまで大きな変化がないという割と稀有な展開になります。
ひたすらお互いがお互いを愛して大事にするので、読んでいてとても癒されます。獣人は自分たちを迫害し、奴隷のように扱うことすらあった人間を愛し緑を愛し、荒れ果てた世界に美しい緑を取り戻すことに尽力してくれる、すさまじく広い心と大きな器の持ち主です。
そんな彼らが人間と共存するには、人間側が俗世に塗れすぎている気がするのですが、人間の醜ささえ包み込んで愛に変えてしまいそうな勢いなのです。
主人公カップルだけではなくほかのキャラたちも優しく素直な子たちなので、読み終わった頃には荒んだ心も浄化されていることでしょう。肌色シーンは随所にありますがそれほど直截な表現は少なくソフトな仕上がりなので、そのあたりが苦手な方でも安心して読めると思います。
誰かの幸せを祈りたくなるような素敵な作品なので、ぜひ、手に取ってみてくださいね。
©九重シャム/双葉社