2021.03.31

名作「ハイスコアガール」の続編!学生時代に恋に破れた日高小春・28歳独身教師が、再びアケコンのレバーを握る!『ハイスコアガールDASH』押切蓮介【おすすめ漫画】

『ハイスコアガールDASH』

学生時代に恋に破れた日高小春28歳独身教師、再びアケコンのレバーを握る

ゲーム「ストリートファイター2」の続編の名前は「ストリートファイター2DASH」だった。ならば格ゲーが大好きな少年少女を描いた名作漫画『ハイスコアガール』の続編は『ハイスコアガールDASH』なのは納得しかない。

前作ではゲーム大好き少年・矢口春雄(やぐち・はるお)としゃべらない格ゲー凄腕お嬢様・大野晶(おおの・あきら)、ハルオに恋をしてゲームを始めた日高小春(ひだか・こはる)の三角関係が描かれていた。

ハルオと大野はゲームを通じてお互いの気持を確かめ合い、小春は身を引いた。その小春が今回の主人公。

ビターな別れの涙を流した彼女が高校を卒業してから十年近く後の2007年、28歳教師として働く孤独な日々を描く。独身女性の冷え切ったリアリティは、ゲームで情熱的な青春を送っていた前作の様子とは真逆だ。

序盤は特に『ハイスコアガール』の時にあった思春期のみずみずしさがほとんどない。死んだ目で教壇に立ち、疲れ果てながらコンビニに寄ってアパートの自室のベッドに寝転がって苛立ち、自分の誕生日も忘れている小春。

「仕事に励む…それはまぁわかりきったことなんだ…ただ卒なく課題をこなして教師としての使命を全うしていくだけ…」
「私みたいな人間が…生徒を引っ張っていくことなんて可能なのかしら…」

趣味のゲームもやっておらず、すっかりネガティブで自信喪失気味の、魂の抜けたような小春の姿からは感情がほとんど感じられない。

職員室で肩肘ついて「元気かなぁ…あの人…」と思い出にふけるシーンの、二度と戻らない熱い恋を彷彿とさせる切なさたるや。

この作品のタイトルは『ハイスコアガール』のままだ。だから本音は言葉でも拳でもなく、ゲームで語る。受け持っている生徒たちがトラブルに巻き込まれる中、小春は自らがやりこんだゲーム「ヴァンパイアハンター」の台に座り、レバーに手をかける。顔つきが前半とは、全くの別物に変化していく。

自らの恋のためにゲームを極め戦い続けていた小春。大人になった今、彼女は生徒を守るために戦い始める。『ハイスコアガール』本編で、ハルオはガイルを、大野はザンギエフを、小春はフォボスをイマジナリーフレンドとして、心の中に置いて向き合い続けていた。フォボスは「ヴァンパイア」の中に登場するロボットの番人、ガーディアンだ。

ゲームを愛する孤高のヤンキー風女子・片桐美和(かたぎり・みわ)、自由人で学校には不登校気味な星奈未来(ほしな・みらい)、普段無感情で目立たないが隠れた才能を持つ山井真司(やまい・しんじ)と、小春の受け持った生徒たちはくせが強い子だらけ

『ハイスコアガール』で登場した中学・高校生は泥臭くやんちゃだったが、『DASH』の中学生は全体的にどんよりした無気力さに包まれている。

大人視点になった今回の続編で、ゲームを介して小春が生徒たちとどうコミュケーション取っていくのかかなり気になるところ。登場人物の特性上話の展開は読めないものの、少なくとも作者は今作も、ゲームが人の心を動かす熱量を持っていると信じて描いていることは、1巻だけで十分伝わるはずだ。

マンガとしての完成度が高いのでこの一冊でも楽しめるが、過去の物語ありきの対比が随所でキモになるので、できれば前作『ハイスコアガール』から順に読んでほしい。90年代と00年代、子供と大人。変わっていく時代と、変わらない情熱、両方がより強く味わえるはずだ。

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たまごまご

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