2021.04.13
【インタビュー】『メダリスト』つるまいかだ「表舞台では見えない、努力の軌跡を描きたい」
転ぶ絶望感を乗り越え、立ち上がってきた人たち
──クラブやリンクへの取材をしっかり行われていますが、実際の現場を見た印象はいかがですか?
つるま:テレビの世界しか知らず、クラブで話がうかがえると思ってなかったので、皆さん温かく受け入れてくださって本当にありがたいです。
クラブで会う子どもたちが、びっくりするくらいみんな自発的なんですよ。自分を振り返ってみても、大人が見ていないと遊んじゃったり、先生の言うことを聞かなかったりしてしまうのではと思っていたんですけど、私が見てきたフィギュアスケートの子どもたちは先生が見てない時もずっと練習しているんです。
私の腰くらいまでの背丈の子が、ちっちゃいスケート靴を履いて自主的に練習をしてる姿に胸を打たれます。
──漫画の中で司といのりが成長していくのと同じ様に、取材先の子どもたちもどんどん成長していきますね。
矢島:劇中に出てくるスケートリンクには、今のところすべて取材に行ってますね。どのリンクの方も、すごく良くしてくださって、快く舞台協力していただいています。
リンクにポスターを貼ってくださったり、見本誌をお送りするとTwitterでコメントともに写真を投稿して下さったりと、応援がとてもありがたいです。つるま先生の取材時に「『メダリスト』読んでるよー!」と、クラブに通っている生徒さんが声をかけてくれるのは嬉しいですね。
つるま:実はスケート界の課題として、スケートリンクがどんどん閉鎖していることがあります。
ただでさえ氷の上でしか練習できないのに、練習場所そのものが失われてしまう。何時間もかけてリンクへ通わないといけなくてそのために練習時間が削られたりとか、必ずしも必要のない努力を強いられている現実があるんです。
──作中でも早朝のリンク貸し切りのシーンもありましたね。
つるま:スケートリンクを使用するのは、もちろんフィギュアスケートだけではないので、時間を譲り合ってきゅうきゅうのスケジュールの中でやっています。
それらを少しでも解決するためにもスケート人口が増えて、リンクも増えてほしい……。『メダリスト』が、興味を持つきっかけのひとつになると嬉しいです。
本当はもっと広々と練習したいし、曲をかけて難しいところの調整や苦手なところを繰り返しやりたいのにできない。練習時間がない中で、世界レベルの点数を出せる選手に成長していけることがすごいですよね。たくさん練習したら強くなれるのに、それもできない中で結果を残すという、才能に溢れた人たちが氷の上に立っている。
ものすごい努力を積み重ねて氷の上に立つ選手全員を応援したいし、これからフィギュアスケートをはじめる人や、世界を相手に飛び込む子ども達もみんな応援したいと思ってこの漫画を描いています。
トップ層にいくためには幼いうちから始めるのが望ましいですが、フィギュアスケート自体はいつからでも始められるし、スピンもジャンプもできるようになります。カッコよさと楽しさと熱さを、『メダリスト』でとにかく表現したいなと思っています。
──先生もフィギュアスケートを始められたとのことでしたが、実際に自分でスケートをやってみていかがですか?
つるま:骨折しました!!!(笑) いろいろ教えてもらって、すいすい滑れるようになってきた頃に、片足で滑る練習をしてたら足を思いきりひねって……複雑骨折でした。
手術してベッドの上で絶対安静のときに、連載決定の連絡を頂いたので、「夢が叶う瞬間ってこんな感じなんだ……。もしかしたらこの骨折をしたから連載が決まったのかな」って思いました(笑)。おかげさまでいまはボルトも取れましたけどね。
──思い出深いデビューの瞬間ですね。骨折と引き換えに連載だなんて、まるで錬金術の等価交換です。いのりちゃんも作中でもよくこけているので、怪我をしないかが心配です。
つるま:そういった部分も含めて新展開もあるので楽しみにしていてください。自分でスケートをやるようになってびっくりしたんですが、転ぶとすごい絶望感があるんですよね。氷の上で転ぶと目の前が真っ暗になるような、気力が落ちていく感じがするんです。それを経験して描いたのが4話でした。
自分が今転んだせいで結果が出ないかもしれないこと自体がショックなのに、立ち上がって演技を最後まで続けるのがすごいことだと体感しました。観戦していると、転倒してしまってもすぐ立ち上がって演技を続けることが当たり前みたいに思えますが、実際はものすごい努力、忍耐力があってできることなんだと。
ジャンプが出来るようになるまで何回も何回も氷の上で転ぶなんて、平気なことじゃないはずなのにそれでも何回も繰り返す。心が削れていく作業を何度も経て舞台に立っているので、この漫画では表舞台では見えない、努力の軌跡を描きたいです。
──確かに実生活で転ぶことってあまりないですよね。フィギュアスケートをやっている方たちは圧倒的に転んで、その分立ち上がってきた人たちかもしれません。
つるま:子供のうちは体重が軽く衝撃が少ないので、転ぶ経験をすることはとても大切ですが、成長期の体との折り合いもつけなければいけません。
経験値を重ねたいけれど身体の変化の影響も著しく、トップで活躍できる現役選手時代も短い競技なので、高校生くらいの子が日本代表として世界に挑む。すごい責任感を持って氷に立っていて、本当に尊敬の念しかないです。自分が高校生の頃、こんなことできた? って。
氷の上でジャンプできるだけで奇跡的なことなのに、その奇跡をみんなが見ている中で何度も起こさないといけない世界ってすごすぎませんか? 当たり前のようにやってのけてしまうから麻痺してしまう部分ですが、その尊さも伝えていきたいです。
誰かの人生の一部になる漫画を描きたい
──先生が影響を受けた漫画、好きな漫画について教えて下さい。
つるま:やっぱり『鋼の錬金術師』は本当にすごい衝撃で。錬金術という実際に中世にあったものをベースにした独特のファンタジーの世界観がとても魅力的です。実際の世界を覗かせてもらっているようなリアル感と臨場感が素晴らしく、登場人物みんなかっこよくて賢いし、はっとさせられる言葉がいっぱいある。
漫画はもともと好きでしたが、『鋼の錬金術師』は娯楽の枠を超えて、私自身の人生に入り込んでくる漫画だと感じたんです。人の人生を支える力が漫画にはあると感じましたし、自分もこんな風にメッセージが込もった漫画を描けるようになりたいと思いました。
自分がキャラクターを作る時にも『鋼の錬金術師』を参考に、脇役がいないようにしたいと思っています。みんなそれぞれの人生観と正義があって、時にぶつかるし共存する。まるでキャラクターが実際に存在しているようなんです。
死生観の筋が通っていて哲学があるのもかっこよくて、自分もそうでありたいと思っています。
あとは『シャーマンキング』、少女漫画では『フルーツバスケット』も好きです。ファンタジーかつダークっぽい話が好きなんでしょうね。
──バトル要素が先立つのではなく、登場人物らの心の機微が感じられる作品が先生の心を掴んでいるのですね。今連載している漫画で好きなタイトルは何でしょうか?
つるま:「アフタヌーン」に載ってる漫画はみんな大好きです! 『ブルーピリオド』は創作の喜怒哀楽について感情移入しながら読んでしまうし、矢島さんが編集を担当している男女の友情を描く『友達として大好き』も。恋愛でくっつくことが目標じゃなくて、友達になっていくことを頑張る話って新しいですよね。
あとは名古屋のご当地コメディの『八十亀ちゃんかんさつにっき』とは、舞台が同じ名古屋の縁で『メダリスト』とコラボ企画をさせていただいたんです! 会社員だった頃に、名古屋の地下鉄ジャックで八十亀ちゃんがいっぱい並んでる姿を見て、自分も将来こんな風にリアルの場でも愛される漫画を描きたいと思いました。人気作の先生が新人にこんなにかまってくださって、本当にありがたくて感激でした……!
矢島:『八十亀ちゃんかんさつにっき』の作者の安藤正基先生がご自身のTwitterで、一巻発売の段階で『メダリスト』をすごく褒めてくださって。つるま先生からも八十亀ちゃんとコラボするのが夢ですと聞いていたこともあり、一迅社の担当編集の方にコラボの相談をしたら快諾してくれたんです。
そしてそして!!つるまいかだ先生が描く「八十亀ちゃんかんさつにっき」×「メダリスト」のコラボ漫画が掲載されてます!!やったー!!本編読まなくていいのでコラボ漫画だけは絶対に読んでください!! pic.twitter.com/zGMX5DMpFW
— 安藤正基🍤TVアニメ3期放送中! (@aichidoughnut) March 27, 2021
お互いの掲載誌にお邪魔する形で、「アフタヌーン」に4コマ漫画を6本も描き下ろしてくださって! めちゃくちゃ面白くて、ネームを受け取った瞬間にふたりで泣くほど笑いました。名古屋のローカルCMの「これがなくっ茶〜♪」ってご存知ですか? 絶妙な名古屋ネタが最高なんです!
──そのCMソング、聞き覚えがあります(笑)(筆者はお隣の三重県出身。名古屋駅30分圏内だったため、作中の名古屋ネタに頷いてしまいます)まさかここで聞けるなんて!ともに名古屋を盛り上げていけるといいですよね。続いて、『メダリスト』の今後の見どころポイントを教えて下さい。
つるま:司といのりの成長はもちろん、司といのりそれぞれのライバルである、同世代の女王的選手の光と元メダリストの謎に包まれたコーチ、夜鷹のコンビについてもこれからしっかり描いていくので注目していただければ。
──ライバルのふたりもダークめなビジュアルで、バトル漫画っぽいキャラクターですよね。夜鷹はいつも黒いマントのようなコートを着ていて。
つるま:「カッコいいキャラクターデザイン」を意識すると自分の漫画の好みが出てしまうなと思います(笑)。少しファンタジーなデザインもキャラクターの個性として楽しんでいただけたら嬉しいです。
──最後に、『メダリスト』の読者に向けてのメッセージをお願いします。
つるま:『メダリスト』を読んでいただいて本当にありがとうございます! スポーツを描いていくことが自分の中で挑戦であり、試行錯誤がたくさんありますが、それも見守っていただけたら嬉しいです。
そしてフィギュアスケートの魅力を、スケート競技を好きな人にも知らない人にも楽しんでいただけるように、丁寧に描いていこうと思いますので皆さんにも楽しんでいただけたらと思います。
──ありがとうございました!
初遠征・西日本大会が始まり、2回転ジャンプを武器に戦いの場に挑むいのりと司が新しいステージへ進む『メダリスト』3巻は、2021年6月23日発売予定。それぞれの選手とそのまわりの人達によるかけがえのない挑戦の連続で、物語はますます加速していきます。脇役なしの成長譚、これからも目が離せません!
作品情報
サイン入り単行本を読者プレゼント!
今回のインタビューの実施を記念して、つるまいかだ先生のサイン入り単行本1巻を1名様にプレゼントいたします!
下記の応募要項をご確認の上、どしどし応募くださいませ!
プレゼントキャンペーン応募要項
【賞品】
つるまいかだ先生のサイン入り単行本1巻を1名様にプレゼント
【応募期間】
2021年4月13日(火)~2021年5月14日(金)23:59まで
【応募方法】
以下の2点の手順にしたがい、ご応募ください。
①コミスペ!公式ツイッターアカウント @comicspacejp をフォロー!
②公式アカウントよりツイートされた以下のプレゼント情報を、「#メダリストプレ」とハッシュタグを付けて、コメント付きリツイート!
▼リツイートして頂くツイートはこちら!
🎉インタビュー記事公開記念!
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※応募方法は▼の2点
① @comicspacejpをフォロー
②このツイートに「#メダリストプレ」と付け、コメント付きRT!★詳細は👇https://t.co/Z8HBwYMo33 pic.twitter.com/cVBxWGCmOc
— comicspace / コミスペ! (@comicspacejp) April 13, 2021
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・本キャンペーンは、「comicspace/コミスペ!」運営の株式会社comicspaceが主催しています。つるまいかだ先生ご本人や、株式会社講談社へお問い合わせ頂いても各位お答え出来かねますため、お控え下さい。また、本キャンペーンはTwitterおよびTwitter社とは関係ありません。
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第5回 みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞
日本全国に数多くの書店とレンタル店を展開する「TSUTAYA」が、漫画に特化した読書記録・管理サービス「comicspace」と、電子書籍配信サービス最大手の「ブックライブ」のサポートのもと、 【第5回 みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞】の投票受付を、2021年4月1日(木)より開催中!
本賞は「2021年3月31日現在で単行本が最大5巻まで発売している未完結の漫画作品」を対象としており、次にヒットすることが期待される、まさに「ネクストブレイク作品」を読者投票によって決める漫画賞です。
大賞作品と各部門賞は6月中旬頃に授賞式イベントにて発表し、全国TSUTAYAの書籍販売・レンタルコミック売場にて大々的に展開を行い、読者からの作品に対する想いをのせた投票コメントも全国の売り場にて紹介予定です。
投票受付は2021年5月16日(日)まで! 今年はどの作品が大賞を受賞するのか!? ぜひみなさんの投票をお待ちしています!
©つるまいかだ/講談社
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