2021.04.10

日頃の職場でのストレス解消に、プロ野球を観戦しつつ実在の球場で販売されている実在の料理を味わいまくるグルメ漫画!『野球場でいただきます』出内テツオ【おすすめ漫画】

『野球場でいただきます』

さて、本日は「ヤングエースUP」で連載中のWebマンガ『野球場でいただきます』を紹介したい。

主人公・坂本つばめは25歳の会社員女性。世間の勤め人たちのご多分にもれず日頃から職場でストレスを溜め込む彼女には、ひとつ強烈に入れ込んでいる趣味があった。

それは買い食い。もっと言うと、プロ野球を観戦しつつ球場で販売されている料理を味わうスタイルだ。

お金もカロリーもいっさい気にせず、パーッと食べたいものを食べたいだけ買って、お酒で流し込む。爽快! このルーティンでつばめは疲れを吹き飛ばし、生きる力を取り戻すのだ。

そんな彼女が、ささいなきっかけから球場の観客席で声をかけられ知り合ったのが大学生の亀井ちゃんという女の子。本作のもうひとりの主人公である。野球についてよく知らない亀井ちゃんに、つばめは試合観戦のいろはだけでなく、関東各地の球場それぞれのごはんの特色も力をこめて紹介しまくる。

ZOZOマリンスタジアムのもつ煮。埼玉メットライフドームのピザ。神宮球場のウインナー盛り。横浜スタジアムの目玉チャーハンにベイスターズドッグ……etc.

にぎやかで、エネルギッシュな野球場の雰囲気。そのなかで誰かといっしょに食べるごはんの楽しさ。そう、ただ美味しいだけでなく、楽しさがそこにはある。

それはいつしか亀井ちゃんを魅了し、つばめと亀井ちゃんは女性ふたり仲良く球場に通ってごはんを堪能する、趣味の同志になっていく……。

というわけで実在の球場を舞台に実在のメニューをあつかった、シチュエーション重視型のグルメ漫画である。

社会人のストレス発散法としてグルメを描く趣向自体はジャンル的に多くの蓄積があるものだが、本作はその上に“野球を観戦した気持ちの勢い”をドッキングさせてあるのがなんとも上手い。

「勝った勝った〜〜〜!!! そして食った食った!」
「んま〜い! 普通のサワーがすごく美味しく感じます……」
「うんうん! テンション上がるとなんでも美味しく感じますよねぇ!」

球場には、感情が渦巻いている。いい大人たちが試合を見ながらその経過に対して喜怒哀楽、ときに恨み憎しみすらおおっぴらにぶちまける。そんなお祭り騒ぎの空間で、とくに推しチームや選手が勝ったのを見届けてから口にするごはんやお酒はそりゃあ進むし、味わいも倍増するだろう。勝利の美酒とはよく言ったもの。

つまり本作は、野球場で食事をすること自体の意味や価値を、まずていねいに描いてあるわけだ。そのため読者が刺激される欲求は、劇中に出てくる料理をただ食べてみたいというだけではない。「野球場で」こそ食べてみたいと、ちゃんと思わせてくれる。そういう漫画なのである。

──以下、余談。
野球場でごはんを食べる漫画として知られる既存作に、『球場三食』という作品がある。筋金入りの野球観戦マニアが全国のスタジアムを渡り、野球を観戦する日には1日3食すべてを球場ごはんでまかなうマイルールを徹底するさまをつづった異色作だ。

『野球場でいただきます』は女性ふたりが野球場を非日常空間と位置付けて、ピンポイントに食べたいものを目指す遊びの時間を示すのに対して、『球場三食』は一日ぶんの生活まるごとを野球場に重ねる男ひとりの求道を描いており、色々と対比させながら読むことができる。

あわせてチェックしても面白いだろう。

試し読みはコチラ!

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miyamo

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