2021.04.12
「美貌の魔術師×ガタイのいい元奴隷」という組み合わせの、ほのぼの癒され系ファンタジーBL!『魔術師シルヴァンの店』池 玲文【おすすめ漫画】
『魔術師シルヴァンの店』
ファンタジーBLですが、あまり派手な剣と魔法などは出てきません。カップリングは、「美貌の魔術師×ガタイのいい元奴隷」ということで、逃げ出して瀕死のところを魔術師に助けられた奴隷が健気でとても可愛いのです。
助けてくれたシルヴァンの店で下働きのようなことをして暮らしている元奴隷のティムは、初めて優しくしてくれたシルヴァンに好意を抱きます。
それは吊り橋効果と刷り込みの合わせ技なのでは……と思わなくもないですが、とにかく好きになっちゃったけどアプローチの仕方がわからない。それ以前に、身分が違いすぎてそういう気持ちを表明することすら躊躇われる、という状況です。
そんな中、それでも一度でいいから触れてほしいという思いが溢れすぎて「一晩だけ、誰よりも美しく見えるようになる薬」を1瓶、拝借してしまうティム。それを飲んで、シルヴァンに告白します。都合により合計2回、ティムはその薬でトライして抱いてもらおうとするのですが、実は肝心の薬はただの薔薇酢だったという……。
そう、シルヴァンはティムの告白を受け入れたのですが、それは薬のせいではなかったのです。
「きみが好きだから」とサラっと純情な元奴隷を悩殺しにくる魔術師さん。
魔術が強大すぎて常時、マスクで声を封じているシルヴァンが肉声でこれを言っちゃうのですから、破壊力は抜群です。両思いになってからの2人のイチャラブはとてもほのぼのと癒されます。
オムニバス形式で、シルヴァンの店にやってきた男たちの恋模様が覗けるのも楽しいです。自分の助手を務めてくれている青年に恋するあまり、彼が座る椅子になりたいと相談に来る紳士とかですね、個性的すぎてとてもいいです。
こちらも両片思いなカップルなのですが、一度でいいから相手に触れたい、という純粋で一途な気持ちがなぜ、手を握るとかそういう一般的な方向ではなくて「椅子になりたい」とアクロバティックな思考になるのか。まさにファンタジー!
基本的にハッピーエンドであまりハードな展開もないため、気軽に楽しめる仕様となっております。
シルヴァン親子の過去はなかなかヘヴィーで黒い感じがしますが、この単行本ではそこまでしっかり描写はないので大丈夫です(個人的にはとても読みたいですが)。肌色シーンがそれなりにしっかり出てくるので、ガッツリ楽しみたい方にはとてもおすすめ。
幸せなファンタジーBLなので、異世界物は重くてちょっと……という方もぜひ、手に取っていただければと思います!
©池玲文/徳間書店