2021.05.05

【インタビュー】『じいさんばあさん若返る』新挑 限「老夫婦が主人公だから、地方が舞台だからこそ描ける話がある」

見た目は若くても、あくまで「老夫婦のラブコメ」を描く

──連載が始まったころと現在とで、作風の変化などは感じていますか?

新挑:振り返ると、初期のころはイネさんに照れ顔をさせることが多かった気がします。正蔵さんに壁ドンをねだってみたり、マッサージされて気持ちよくなってみたり……。そういった話を読者の方も期待しているんじゃないかと。


ドラマに感化されて壁ドンをねだるイネさん

だけど描いていくうちに、このふたりは50年以上も連れ添っているのだから、今さらいちゃつく必要はないんじゃないか? って思えてきて。最近はストレートなラブコメ展開はなるべく避けて、変化球で攻めるようにしています。

──正蔵さんとイネさんのように、この作品自体も円熟期に入ってきたと。

新挑:43話の「髪留め」あたりがターニングポイントでしたね。それまではふたりの心理描写をあまり描いてこなかったんですけど、あそこから水面下で駆け引きする話が増えました。


高度な心理戦

──本作を描く上で、新挑先生が大事にしていることは何ですか?

新挑:大きくふたつあって、ひとつめは、どこから読み始めても楽しんでもらえるように1ツイート(4ページ)内でオチをつけること。なので、少子高齢化などをテーマにするときは描きたいことが多すぎて削るのに苦労しますね。

そしてもうひとつは、この作品ではあくまで「老夫婦のラブコメ」を描くということ。見た目は若返っていても中身はおじいちゃんとおばあちゃんなので、うっかり若者っぽい言動をさせてしまわないように注意しています。

──2巻の終盤で、正蔵さんがおじいさんの姿に戻ってしまいましたが、あれはどうしてだったんでしょう?

新挑:あの時点で連載開始から1年近く経っていて、自分でもふたりがお年寄りだったことを忘れてしまいそうになるときがあったんです。初心に帰る意味も込めて、正蔵さんだけ元に戻ってもらいました。


元に戻ってしまった正蔵さん

──率直なところ、読者からの反応はどうでした……?

新挑:(若返った姿に)「もどして」ってめちゃくちゃ言われました(笑)。それはある程度予想していたのですが、あえて3ヶ月くらいおじいさんの姿のまま描き続けたんです。

今の路線のままだといつかネタ切れしてしまうと思っていましたし、長期的に見ればこういう話も必要だろうという判断で。そのおかげで、イネさんは正蔵さんの容姿に惚れたわけではないという部分も深堀りできましたしね。


元に戻っても心はイケメンのまま

──単行本2巻の描き下ろしなど、死を連想させる描写も増えてきている気がします。最終回に向けての構想もすでにあるのでしょうか。

新挑:お年寄りを主人公にしている以上、「死」は避けて通れないテーマだと考えています。けれどこの作品はあくまでもラブコメですし、読者さんが哀しむような終わり方にはさせないつもりなので、その点はご安心いただければ。

バトル漫画の手法を逆転させてラブコメに取り入れる

──新挑先生が漫画家になりたいと思ったのはいつごろですか?

新挑:中学生のときだったと思います。大友克洋先生の『AKIRA』に衝撃を受けて、自分も読者をワクワクさせられる漫画を描いてみたいなと。それから高校までは、頭の中の妄想を垂れ流すような漫画をひたすら描いていました。

──出版社に持ち込みをされたこともあるんでしょうか。

新挑:はい。大学生になったのを機に、本格的に漫画家を目指して投稿を始めました。だけど、どの出版社に行ってもボツの連続で……。

夢を諦めるつもりはなかったものの、現実問題として漫画家以外の道も考えないといけないなと思い始め、勉強も兼ねてネット上にイラストをアップするようになりました。どんな形であれ、絵を描く仕事には携わりたかったので。

──『幼なじみになじみたい』で漫画家デビューされたのも大学在学中だったそうですが、これはどんな経緯だったんでしょう?

新挑:当時通っていた大学を舞台にした漫画をpixivで更新していて、それを見た今の担当さんに声をかけていただいたのがきっかけです。その作品は1話1ページのサイレント漫画だったので、キャラクターの名前や細かい設定をあとから決めて、『幼なじみになじみたい』が誕生しました。

──見事に夢を叶えられたんですね。そのときのお気持ちはいかがでしたか?

新挑:もちろんめちゃくちゃ嬉しかったです! ただ同時に、ラブコメは最初から目指していたジャンルではなかったので、商業連載として続けていけるのか不安でもありましたね。

先ほど『AKIRA』がきっかけだったと言ったように、もともとはアクション系の漫画家になりたかったんです。けれどその方向性で描いた持ち込み原稿で結果が出なかったので、作風を広げるためにカラーイラストや女の子のイラストも描くようになり、そうした最中でのオファーでした。

──前作も『じいさんばあさん若返る』もラブコメなので、それは意外でした。『AKIRA』の他に影響を受けた作品はありますか?

新挑平野耕太先生の『HELLSING』『ドリフターズ』、内藤泰弘先生の『トライガン』『血界戦線』、椎橋寛先生の『ぬらりひょんの孫』、三浦建太郎先生の『ベルセルク』……。このラインナップでもわかるように、ほとんど血みどろのバトルものです。

──ラブコメ作品はあまり読まれないんですね。

新挑:そうですね、Twitterにアップされる単発漫画にときどき目を通すくらいで。むしろ、持ち込みでバトル漫画が今ひとつ受けなかったので、自分の得意分野から離れたラブコメのほうが、客観的に面白い話作りができたと思います。

例えば平野耕太先生の漫画は太くて荒々しい線が魅力なので、ラブコメならすっとした線のほうが読みやすいかな、といった具合に。また、『じいさんばあさん若返る』における心理描写や死生観にも、バトルマンガの影響は少なからず受けていると思います。

──それでは最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。

新挑:数秒でも、一瞬でも、悲しく息苦しい今の世の中を忘れさせてくれるような、じいさまばあさまたちの、平和で何気ない日常をこれからも届けていくつもりです。これからも「けっぱって」(津軽弁で「がんばるぞ!」の意)いきますので、応援のほどよろしくお願いします!

──本日はありがとうございました!

作品情報

サイン入り単行本を読者プレゼント!

今回のインタビューの実施を記念して、新挑 限先生のサイン入り単行本1名様にプレゼントいたします!

下記の応募要項をご確認の上、どしどし応募くださいませ!

プレゼントキャンペーン応募要項

【賞品】
新挑 限先生のサイン入り単行本1名様にプレゼント

【応募期間】
2021年5月5日(水)~2021年6月5日(土)23:59まで

【応募方法】
以下の2点の手順にしたがい、ご応募ください。

コミスペ!公式ツイッターアカウント @comicspacejpフォロー!

②公式アカウントよりツイートされた以下のプレゼント情報を、「#じば若プレ」ハッシュタグを付けて、コメント付きリツイート

▼リツイートして頂くツイートはこちら!


★該当ツイートに、コメント付きRTインタビューへの感想『じいさんばあさん若返る』へのアツい思いを書いていただければプレゼントの当選確率がアップ!

★更に、漫画の口コミ情報サービス「comicspace」で書いた『じいさんばあさん若返る』のレビューへのリンクを該当ツイートに付けて、コメント付きRTしていただければ更に当選確率がアップ!

当選者へのご連絡

厳正なる抽選の上、当選者様のTwitterアカウントへDM(ダイレクトメッセージ)にてご連絡いたします。

その後、当選者様には【住所・氏名・お電話番号】をご連絡いただくことになります。プレゼントの配送に必要な情報となりますので、ご協力を宜しくお願い致します。

注意事項

・今回のプレゼントでは、宛名を入れさせて頂きます。
・当選の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
・当選に漏れてしまった方へのご連絡は致しません。あらかじめご了承ください。
・賞品発送時の紛失につきましては対応いたしかねますのでご注意ください。
・発送先住所は日本国内に限ります。
・当選権利の譲渡、換金は一切できません。
・転売を目的としたご応募は禁止させていただきます。
・応募内容に不明な点があった場合や当選後の連絡が不通となった場合、応募・当選を無効とさせていただくことがあります。あらかじめご了承ください。
・抽選に関してのお問い合わせにはお答えできかねます。あらかじめご了承ください。
・本キャンペーンは、「comicspace/コミスペ!」運営の株式会社comicspaceが主催しています。新挑限先生ご本人や、株式会社KADOKAWAへお問い合わせ頂いても各位お答え出来かねますため、お控え下さい。また、本キャンペーンはTwitterおよびTwitter社とは関係ありません。
・応募時に記入いただく情報については、抽選および当選された方への賞品発送にのみ利用させていただきます。
・本キャンペーンは予告なく変更・中止させていただく場合がございます。あらかじめご了承ください。

第5回 みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞

日本全国に数多くの書店とレンタル店を展開する「TSUTAYA」が、漫画に特化した読書記録・管理サービス「comicspace」と、電子書籍配信サービス最大手の「ブックライブ」のサポートのもと、 【第5回 みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞】の投票受付を、2021年4月1日(木)より開催中!

本賞は「2021年3月31日現在で単行本が最大5巻まで発売している未完結の漫画作品」を対象としており、次にヒットすることが期待される、まさに「ネクストブレイク作品」を読者投票によって決める漫画賞です。

大賞作品と各部門賞は6月中旬頃に授賞式イベントにて発表し、全国TSUTAYAの書籍販売・レンタルコミック売場にて大々的に展開を行い、読者からの作品に対する想いをのせた投票コメントも全国の売り場にて紹介予定です。

投票受付は2021年5月16日(日)まで! 今年はどの作品が大賞を受賞するのか!? ぜひみなさんの投票をお待ちしています!

特設投票ページはこちら

1

2/2

関連画像

この記事を書いた人

ましろ

このライターの記事一覧

無料で読める漫画

すべて見る

    人気のレビュー

    すべて見る

        人気の漫画

        すべて見る

          おすすめの記事

          ランキング