2021.04.28

【インタビュー】『声がだせない少女は「彼女が優しすぎる」と思っている』矢村いち「普通の人からしたら当たり前でも、ふたりにしては特別なもの」

読者視点で共感度の高いキャラクター

──高校生レベルで、キャラクターの心が折れるようなヘビーな話は描く予定はありますか?

矢村:若干重くしたとしても、絶対救われる方向ですね。胸くそ悪い方向には絶対しない。ブラック展開があってもその2、3話先で救われないと、もやもや度がたまりますもんね。「声カノ」にはあってないのかなって。

──優しい世界の話を描いているものの、みんな何かしら考えて成長している感覚はあります。キャラクターたちはどう成長しているんでしょうか?

矢村:キャラクターたちが出会ったことで、性格に影響が出ているというのはありますね。真白と心崎も出会わなかったら、そんなに優しくなかったでしょうしね。真白は会話できなくて気づかれないまま精神的に病んじゃうでしょうし、心崎も優しいことに気づかれず自分からも付き合おうとしなかっただろうし。コミュニケーション音痴がふたり。まあこの二人以上に、中村さんが一番音痴だと思っていますけども(笑)

──中村さんはファンの共感度が高いキャラですね。

矢村:好き、って言ってもらえるのは心崎と真白。私もこの立ち位置にいたからわかる、ってリプがくるのは中村でした。読者の心情として、一番近そうなキャラを置いておきたかったってのはあります。

ファンの共感度が高いキャラクター、中村

──出たときの反応はいかがでしたか?

矢村:Twitterにあげたときは、自分と重ねる人が多かったですね。平凡に近いキャラだけど、このままだと人生損するんだろうなあって思います。真白と心崎の関係はお互いこの先続いていくだろうけど、中村は卒業したら縁が切れるくらいのつながりに見えてしまう……。みんなのことを助けるだけ助けて、誰かに助けてもらえないみたいな感じになっちゃうんじゃないかなあ……って。

──つらすぎる!

矢村:もちろん、ちゃんと救われる話は描きますよ!(笑)

──中村さんが一人仕事を終えて帰ってくるくたびれた独身女子になっているかのような……。

矢村:その話も担当さんと以前しましたね。職場で中村さんが仕事を押し付けられまくって大変になってそうとか(笑)

──あと特殊な位置の習志野さん。彼女が出てきたきっかけはなんですか?

矢村:最初は一話だけ登場するキャラだと思って出しました。その後、話に勝手に出てきた感じですね。すごいバカっぽくて明るい気持ちにしてくれる。心崎と真白と中村ははしゃぐことがないから、唯一のはっちゃけ要員でしたね、最初の。お姉さん的視点も持っているので客観的にも描けるし。あとは勝手にぐいぐいきた感じですね。

珍しくはっちゃけた年上キャラクターの習志野

──あとは3巻の体育祭編のふたり、大宮と土屋も印象的でした。

矢村:あのふたりはクラスメイト代表として描きはじめて。真白がクラスメイトと仲良くなりはじめた、という意味で。

真白の人間関係がクラスメイトへ広がった瞬間だ

──このあたりから真白がタフになりますね。

矢村:そうですね、4巻以降のほうがタフになってきてます。

──真白の成長は、どのへんからスイッチが入ったんでしょうか?

矢村:2巻ラストの、名前を呼ばれたところは大きかったかもしれないです。徐々にですね。

──彼女がもししゃべれていたら性格が変わっていた可能性がありますか?

矢村:仮にしゃべれていても、大宮と土屋みたいなキャピ系ではないですね。今よりもプラス思考かもしれないですけど。

「声がだせない少女」

──彼女たちにとっての理想のコミュニケーションってなんだと思いますか?

矢村:今も幸せじゃないとは、思ってないんじゃないかと。真白に「理想的か」と聞いたら「理想」って答えるんじゃないですかね。

──では心崎さんにとっての幸せ、充実ってどのあたりだと思いますか?

矢村:真白といたら、充実してそうですけど…(笑)。「実はみんなの心の声が聞こえていたよ」という隠し事がなくなったら幸せなのかな。

──心崎たちの体育祭の打ち上げのシーンはかなり見せ方が印象的でした。

矢村:心崎も、真白によって世界が広がっているって感じですね。心の声が聞こえるがゆえに表面的なものしか見ようとしなかったから深入りを避けていたけれども、真白と出会ったことで内側まで踏み込むようになって、視点が広がったんじゃないですかね。

真白に最初関わった理由も、ネガティブな声がずっとするからでしたし。それを聞こえなくするために話しかけたら、真白にぐいって引き込まれた感じですよね。

心の声も飛び交う。高校生の等身大の幸せが詰まっているワンシーン

──ここは「彼女が優しすぎる」って言葉にかかってくると思うんです。実は「彼女」って誰なんだろう?って。

矢村:そこは、そうですね(笑)。このふたり以外にも、色んなキャラに当てはまる感じかな、と。

──となると「声がだせない少女」という言葉も真白だけじゃなく……。

矢村:言っちゃっていいのかな(笑)、心崎もそうだよねって話は担当さんとはしていますね。「言葉にできていない」というのも声がだせないこと、みたいな。

──他にふたりの中で「ここは魅力的に描きたかった」部分はありますか?

矢村:絵は、とにかくかわいく描こうとは思っています。そこは気をつけなきゃいけないなって。

──ぼくは心崎さんの「私ここの天ぷら好きなんだよね」のコマが好きです。めちゃくちゃかっこいいですよね。

矢村心崎はかっこいいです。男性キャラにしたら好きになりそうなキャラ、だと思って描いてました。自分のまわりだけかもしれないですけれども、女性は心崎が好きで、男性は真白が好きって人が多いです。心崎はズバズバ言ってくれるから女性に受けるんでしょうね。

王子様ムーブが魅力的すぎる心崎

──心崎さん自体はモノローグは多いですけど、セリフは少ないですよね。

矢村:口数少ないですからね。それゆえ真白以外には勘違いされる。真白以外には心崎さんは「きつい人」っていう印象ですからね。自分はどっちが好きなんだろうっていったら……心崎さんですけどね(笑)。真白が好きな人は、彼女の雑な部分がいいって方多いですね。

矢村いち先生の執筆環境

──執筆作業中にBGMはかけていますか?

矢村:無音だと絶対に描けないですね。三個くらいタブレットを開いて、別々なものを流すことがあります。ネーム中は一つの音だとそれに集中しちゃうから。逆に原稿の時は一本だけ聴いて集中してやります。

──ちなみにどんなものを流していますか?

矢村:気分によってですけど、動画配信サイトで映画とドラマとアニメを流したり。今は「メンタリスト」とか海外ドラマにはまってます。Amazon Prime Videoのオリジナル作品が面白くて、「魔法のレシピ」とかですね。女の子三人の幸せなふわふわした優しい世界で、「プリズン・ブレイク」見た後とかだとほっとしますね。

──映画・漫画・アニメなどで影響を受けた作品はありますか?

矢村:影響を受けたものって、正直あんまりないのかな。自分の好きなものはあるんですけど。漫画で一番好きなのは『銀魂』なんです。映画だと「プラダを着た悪魔」。「パイレーツ・オブ・カリビアン」も好きです。

──なるほど、確かに全然影響受けていないですね(笑)

矢村:あと『キングダム』とか『SLAM DUNK』が好きですね。

──熱血寄りですね。

矢村:実は女の子のキャッキャウフフ系はあんまり見ていないですね。漫画は少年漫画、映画はヒューマンドラマ、海外だと一話完結サスペンスが好きです。あとは「牛沢」さん、「レトルト」さんなどの日本TOP4と呼ばれている実況者たちのゲーム実況をたまに見直したりとか。「龍が如く」シリーズの実況を何度も見直してます。

──では、最近読んでよかった漫画があったら教えて下さい。

矢村:『俺だけレベルアップな件』とか読んでました。『葬送のフリーレン』や、『同居人はひざ、時々、頭のうえ』とかも好きです。

──もし作中の4人が映画を見に行くとしたら、どんなものを見せてみたいですか?

矢村:「僕のワンダフルライフ」とか。でも心崎は映画館の観客の音がうるさくて、無理じゃないですか。ホームシアターでも、全員初見じゃないとネタバレを食らっちゃいますね(苦笑)。

徐々に「世界」の境界線が大きくなっていく

──今後、物語の中でふたりはどういう成長をしていく予定ですか?

矢村:言える範囲だと、今まではふたりの世界だったけど、徐々に「世界」の境界線が大きくなっていくんじゃないですかね。もちろん、そこまで急に変わるわけではないです。

最新4巻 書影

──この作品は読み終わって毎話幸せになれるのが魅力だと改めて感じました。これはTwitterのときからの名残ですか?

矢村:連載が確定したのがTwitterで一話をあげた段階なんで、優しい世界が確定したのは連載版からです。「優しいふたり」だけど、「優しい世界」ではなかった。

それこそはじめのころは「心崎と真白だけが見たい」とか「他のキャラを出していいのか」といったご意見もありました。Twitterからのファンの方は特に心崎と真白を見たい、という感じだったので。でも今ではそういったご意見は無くなってきましたね。3巻からもクラスメイトがバンバン出てきてますが、優しい世界を崩すことはないです。

──優しい世界の作品といってもふわついてないですよね。コミュニケーション面でのリアルさは意識されましたか?

矢村:たとえば、中村は特に誰とでも仲良くなれてキャピキャピしたキャラでもいいのかもしれないですけど、でもそれだと中村さんじゃない。中村の悩みも描きたい。すべてのキャラに、そのキャラだからこその悩みがあるから、それを描きたいですね。他人からしたら小さな悩みかもしれませんけど、本人したら大きな悩みでしょうから。

──この作品のここを見てほしい、という一言をお願いします。

矢村:落ち込んだ時とか、いっぱいいっぱいな時、難しい話や暗い話を読みたくない、優しい世界をみたいという時に読んでほしいですね。あとはささやかなコミュニケーションを見守りたい方に読んでいただけたら、ってかんじでしょうか。

──最後に、ファンの方にどういうところを今後注目してほしいかもお願いできますでしょうか。

矢村:心崎、真白、中村の小さい一歩を見ていただければって思いますね。これからも温かく見守っていただきたいです。

──本日はありがとうございました!

一歩ずつ頑張ろうとしつづける真白の姿、わかっているからこそ照れちゃう心崎。なんて優しすぎる空間!

作品情報

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プレゼントキャンペーン応募要項

【賞品】
矢村いち先生の直筆サイン入り色紙1名様にプレゼント

【応募期間】
2021年4月30日(金)~2021年5月30日(日)23:59まで

【応募方法】
以下の2点の手順にしたがい、ご応募ください。

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第5回 みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞

日本全国に数多くの書店とレンタル店を展開する「TSUTAYA」が、漫画に特化した読書記録・管理サービス「comicspace」と、電子書籍配信サービス最大手の「ブックライブ」のサポートのもと、 【第5回 みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞】の投票受付を、2021年4月1日(木)より開催中!

本賞は「2021年3月31日現在で単行本が最大5巻まで発売している未完結の漫画作品」を対象としており、次にヒットすることが期待される、まさに「ネクストブレイク作品」を読者投票によって決める漫画賞です。

大賞作品と各部門賞は6月中旬頃に授賞式イベントにて発表し、全国TSUTAYAの書籍販売・レンタルコミック売場にて大々的に展開を行い、読者からの作品に対する想いをのせた投票コメントも全国の売り場にて紹介予定です。

投票受付は2021年5月16日(日)まで! 今年はどの作品が大賞を受賞するのか!? ぜひみなさんの投票をお待ちしています!

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