2021.05.07
縁談に乗り気で無いヒロインと、前向きな名家のヒーローが繰り広げる、年の差大正ロマン的ラブロマンス!『嫁入りのススメ』福嶋ユッカ【おすすめ漫画】
『嫁入りのススメ』
福嶋ユッカ先生による『嫁入りのススメ』の第1巻が発売されました。さっそくあらすじをご紹介しましょう。
時は大正時代。高級カフェー「カシオペア」で働く花宮蘭子は、24歳の元お嬢様。家族からは行き遅れと言われても、本人はどこ吹く風で仕事第一。そんなある日、蝶名橋家の子爵から蘭子に縁談の話が舞い込む。なんと、両家の祖父同士が孫を結婚させる約束をしていたという。とはいえ、結婚に興味のない蘭子は断るが、体裁を保ちたい両親の勢いに押され、しぶしぶ蝶名橋家へ向かうことに……。驚いたことに、婚約者はカフェーの客で、不愛想な青年・耀一郎だった。しかも彼もこの結婚が嫌なのかと思ったら、意外にも乗り気のようで……!?
色々と仕掛けのある関係
大正ロマン的なラブロマンスでございます。許嫁との、望まざる結婚というのはこの時代背景もあり、よく見るものではあるのですが、本作の場合色々と、一筋縄ではいかない設定が盛り込まれています。一つは、ヒロインの蘭子は24歳と若いながらも、当時からすると「行き遅れ」と言われるような年齢らしいということ。
一方で許嫁のお相手となるのは、まだ学生で、結構な歳の差カップルとなります。一方で、蘭子の家は事業に失敗し没落、相手の耀一郎のお家は名家で、格差婚でもあるというアンバランスさ。プロフィールだけ見るとなかなかに歪な関係なのですが、さらにこの2人の想いもガチャガチャしているという。
乗り気で無いヒロインと、前向きなヒーロー
行き遅れで没落した元貴族という身分からすれば、断る理由もない圧倒的好条件の縁談なのですが、当の蘭子は乗り気でない様子。
というのも、あまり恋愛や結婚に興味が無く、カフェーでの仕事が好きで、できれば今の仕事をずっと続けていたいなんて思うような、自立心の強い仕事人間。この縁談にも乗り気で無く、立場上断ることも出来ないので、縁談は進めているという、とても後ろ向きなステータス。
一方の耀一郎も、最初はとても不愛想で不機嫌そうな態度を取っており、蘭子同様乗り気で無いのかと思いきや、実はめちゃめちゃ乗り気だということが早々に判明。幼いころから蘭子に憧れており、念願叶っての婚約。ただ愛情表現の仕方が分からないので、どうにも愛想無い感じで接してしまうという、純情空回りボーイでございます。
頑張る青年を愛でる作品では
互いの立場上、縁談は黙っていても進むので、物語の軸になるのはこの2人がどう心を通わせていくか。耀一郎自身はイケメンで博学、家柄も申し分なしとハイスペックな男子なんですけれども、惚れた弱みであるとか、年下ゆえの弱さとか、恋愛経験の無さとか、とにかくアプローチがへたくそで、なかなか蘭子の心をつかむことが出来ません。
ただただ高価なプレゼントをしたとしても、お金を稼ぐ大変さを知っている蘭子にしてみれば、それは感謝されるものの、同時に気後れも生んでしまうため、逆効果という。
真摯に思いを伝えていくのが近道なのですが、口下手でそれもなかなか時間がかかるというもどかしさ。蘭子視点で物語は進んでいくのですが、彼女自身、現時点ではなかなか自ら歩み寄ろうという姿勢を見せないため、耀一郎ばかりが頑張る構図になっている=耀一郎の物語っぽい感じがすごくある。
イケメン御曹司からのアプローチにドッキドキ……という楽しみ方もさることながら、口下手なイケメン男子の頑張りを愛でてニヤニヤ……みたいな楽しみ方の方が出来そうな雰囲気すらあります。
硬派で不器用なイケメン男子からの、静かながらも熱いアプローチを堪能したいという方に、是非ともお勧めしたい一作でございます。
©福嶋ユッカ/小学館