2021.05.08

人間を猫に変えてしまうウイルスによりパンデミックが起こった世界を描いた、シリアス×ほのぼのがクセになる“キャットフルホラー”漫画!『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』 ホークマン, メカルーツ【おすすめ漫画】

『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』

さて、みなさん。2014年に公開された映画「ゾンビーバー」をご覧になったことはおありだろうか?

汚染物質の影響でゾンビ化した野生のビーバーに噛まれた人間が次々とビーバーに変化して他人を襲いだす地獄絵図。クライマックスに犠牲者の一人が口走るセリフ「あなたも今にビーバーになる」が強い印象を……って、いやゾンビ要素はどこいった!? というツッコミそれ自体も織り込んだコメディホラーである。

そして今回とりあげる漫画もまた、ゾンビ感染の物語構造をハッキングした鋭い角度の変化球。その名もロメロ風味な『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』という。

キャット。そう、猫だ。ヒトがかわいい猫ちゃんになってしまうのだ!

劇中の説明によると、すべてのはじまりは品種改良された一匹の猫だったらしい。その特殊な猫はヒトに接触感染して肉体を変異させる──つまり猫にしてしまうウィルスを宿していた。世の中では多くの家庭が猫を飼っているため、猫化パンデミックが起きるのに長い時間はかからなかった。

猫が地上にあふれかえり、そのぶん人類は数を減らして動物の霊長の座を追い落とされた。猫ちゃんに囲まれてスリスリ、モフモフされればどんなたくましい男でもたちまち身体が縮み、毛が生え、同じ猫ちゃんになってしまう。世界は……猫に支配された!

そんな“猫災害”によりマッドマックスめいて荒れ果てた風景のもと、猫の大群から逃げたり建物に立てこもったりのサバイバルをおこなうのが、謎多き男・クナギとセーラー服少女・カオルの主役コンビだ。

クナギは記憶喪失だが猫に関する知識がやたらと豊富で、カオルが兄とともに営む猫カフェに居候していたところでパンデミックが発生。猫と直に接触しないよう全身防具で身を固め、持ち前の猫トリビアを活かしてピンチを切り抜けていく。ともに逃げる仲間が猫にされる悲劇に必死で堪えながら……。

という具合に、状況仕立ては完全にゾンビホラーではある。だがゾンビ化の代わりに猫化、そしてゾンビの醜怪さの代わりに猫の可愛さをそのまま強引に置き換えたことで、愛猫家であるキャラクターが「あんなにかわいい猫ちゃんにもうさわれない!」と大まじめに嘆くさまが面白みを生んでいる。読者と作品内の間で緊張感のギャップが起きてシュールな笑いを誘うのだ。

第3話後編、クナギが味方を逃がすため囮になって追っ手を引き付けるアツいシチュエーションを見ていただきたい。

「楽しんではいけない……!! 猫と遊べて嬉しいと思ってはならないんだ!!」と自分で自分を叱咤しながら玩具のネズミをふりまわし、猫ちゃんたちの猛攻をかいくぐる主人公の雄姿。精緻に描き込まれたダイナミックなアクション作画を全開にして、やってることがこれ! というシリアス×ほのぼのの悪魔合体がクセになる名シーンだ。

ほかにもスーパーマーケットに避難したクナギたちがカオルの披露したアレンジ猫まんまを食べてグルメ物ばりのリアクションを見せる場面など、「あれ、自分は今どんな漫画を読んでいるんだっけ」とジャンル的めまいを引き起こす瞬間に満ちた唯一無二の“キャットフルホラー”漫画になっている。ぜひご覧あれ。

なお連載はマッグガーデン社の「マグコミ」で配信中。単行本は第1巻が2021年5月10日に発売を迎える。

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miyamo

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