『オールドファッションカップケーキ with カプチーノ』

前作がこちらで、もう絶対にこの1作目を読んでからこちらに来てほしいBLです。1冊目はカップルになるまでで、今作はくっついてからのお話です。2冊合わせて読むのをお勧めします。

これはもう、ここ最近のオフィスラブ史に残る傑作なんじゃないかと思います。年下の部下に溺れるアラフォー上司がこんなに可愛いなんて誰が思っていたでしょうか。

部下×上司の下剋上ＢＬなんですが、年上上司のはずの野末が、もう完全に恋する乙女のようになっており、やたらと可愛いのです。外川はそんな野末にメロメロなのですが、おそらく相手へのはまり具合は野末の方が深いです。

年甲斐もなく周囲の反応を考慮することすら忘れて、自分の昔のネクタイを与え、手作り弁当を持たせてい会社に送り出すなど、なし崩し的に半同棲みたいな暮らしをしようとする野末。

無意識の行動を同僚から指摘されて、「普通」ではない態度を外川に取っていたことを自覚し、この関係が発覚した時のことを考えて冷や水を浴びせられたような気分になってしまいます。男女の恋愛ですらない部署内での上司部下の関係。露見すれば双方とも仕事に大きな影響が出るのは簡単に予想できることでした。

久々の、いや、もしかしたら初めての本気の恋に浮かれていた野末は、大人の分別を発揮してしばらく外川と距離を置こうと試みます。もちろん外川は突然そんなことを言い出した野末に戸惑い、怒りを覚えます。付き合い始めて初の喧嘩がこれです。

社内の、しかも同じ部署にいる限り、一緒に住むことはもちろん頻繁に泊まりに行ったりすることすらリスクになる状況は、かなりメンタルにきます。野末はプライベートに気を取られすぎて仕事にミスが出始めるところまで追い込まれ、そして外川はそんな状況を変えるべく転職を考えて野末に黙って動き始めていました。

ラブラブだけどすれ違うというカップルあるある話なのですが、しっかり引きずり込んでくれるんですよね。

日常生活と心理面の動きを丹念に追いかけている2作目も、肌色シーンはかなり控えめです。彼らほとんど服を脱がない。脱いでいないんですけど結構、濃厚なイメージが残るのはさすがというべきでしょうか……。読みごたえはしっかりです。

ぜひ、年下の部下に溺れる可愛いアラフォーをご堪能ください。私はBL沼に引き込みたい相手に読ませる本にリストインさせたいと思います。

©佐岸左岸/大洋図書