『兵士の嫁入り』

表紙の雰囲気通り、ちょっとライトでファンタジーな異種間恋愛BLです。

神聖な大樹を守る『森の民』から求められると、人間が指定された娘を嫁入りさせるというシステムが出来上がっている世界。そんな世界観なのに男が男に嫁入りしてしまうのがBLワールドです。

カップリングは、妖精といわれる森の民×人間の兵士です。

子どもの頃、森の民の少女と交流を持ったことがあるオリバーは、その少女に恋をして、森から出ることを禁じられているという彼女を救い出すために体を鍛えて兵士になり、森の民に輿入れが決まった娘を森まで送り届ける護衛兵士の役割をゲットします。そこで森の民と接触し、少女のことを聞こうとするのですが――なんと迎えに来ていた森の民の美形男は、花嫁をガン無視してオリバーを担ぎ上げ、他の護衛とオリバー本人が困惑する中、

「花嫁はいただいた！」

と宣言して一行を大混乱に陥れ、森の中に戻っていってしまいます。

当然、オリバーも訳が分からないんですが、訳が分からないまま媚薬を盛られ、そのままお洋服をはぎ取られて事に及ばれ、一族全員の理解が追い付かないまま「俺の嫁のオリバーだ」と宣言された挙句、大樹に婚礼の承認をもらいに行く羽目になります。そして何もわからない状態のまま大樹の元で儀式が行われて承認され、なんと人間の男でありながら子供が産める身体になるのです。

帯にハートフルって書いてあったんですが、ハートフル要素はどこに……？　と視線が泳ぐ超展開が続きます。最終的には、探していた少女が自分をさらった夫であることが判明したり、双子の弟に引っ掻き回されたりというハートフルな展開になっていったのですが、そこに至るまでの流れがあまりにもアレだったのでいろいろと笑ってしまいました。

もう読んだ人全員爆笑すると思うのでネタバレは書かないでおきますが、本当にオリバーの身体の変化がその、本人は洒落にならんくらい大変なのはわかるんですが──見ている側としては笑うしかない感じなので、ぜひ読んでみてください。私は腹抱えて笑いました。

最後は両思いのハッピーエンドですし、男同士の妊娠出産がOKならとても楽しく読めるBLだと思います。肌色シーンもしっかりありますので、深く考えずに読んで萌えましょう。

©宝井さき/幻冬舎コミックス