2021.08.24
異世界エルフが日本の食文化を調査する様を描いた、異色のグルメ漫画!『めしに導かれしエルフ』柚子桃, 司馬漬け【おすすめ漫画】
『めしに導かれしエルフ』
本日は、KADOKAWAのWEBマンガ誌「少年エースplus」で連載中のグルメ漫画『めしに導かれしエルフ』を紹介しよう。
エルフ? そう、エルフである。容姿端麗で長い耳を生やし、長寿で、誇り高い……ファンタジー分野でおなじみの、例の種族。それを主人公にすえて我々には親しみやすいメニューを題材とする異色のごはんモノが本作だ。
まず、異世界のエルフが彼女たちにとっての異世界にあたる我々の宇宙を見つけ、調査員を派遣する図で幕が開ける。
送り込まれたのは女性のエルフ騎士・コロエ。調査対象の惑星「地球」にある国家のひとつ「日本」に潜入し、その文化を体験しては故郷へ情報を送る任務を担っている。彼女がリポートするのは、おもに現代社会の食文化だ。
おでん屋では定番の盛り合わせや豆腐をご飯にのせた「とうめし」による出汁のうまみに翻弄され。
寒い日には薬膳カレー屋のビュッフェで米・肉・ルーにうどんまで盛りたいだけ盛ってタガの外れた大食いをしてしまい。
故郷で勝負事が催されるとなれば“勝つ”のゲン担ぎでトンカツ定食を頼んで脂身のうまみに理性を揺るがされ……。
気が付けば毎回おいしいごはんに夢中になっては、調査の目的と手段がひっくり返るコロエ。使命感とプライドだけでは満たせぬ腹を抱えて、きょうもエルフ騎士は気の向くままに料理店を巡っていく!
バックボーンの隔たった人物が日本を訪ねて文化のあれこれにふれリアクションするさまを描く、という意味では外国人キャラクターの日本体験記ジャンルに相当する。ただし、そこをファンタジー世界のエルフ騎士に互換することで独特の言動や思考を描けるのが本作の持ち味となっている。
食事を“調査”する際の趣は毎回まるで命がけのような真剣さ。本人の頭の中では敵の軍勢や入り組んだ迷宮や恐ろしい魔物どもに戦いを挑む壮大なイメージが展開される。それでていて、実際のありさまはただただ美味しいごはんに顔をゆるませ多幸感に包まれる、食いしん坊っぷりなのである。このギャップが秀逸な笑いどころだ。
ギャップといえば、線の細いイメージで作品によっては草食に設定される場合もあるエルフが大、食いで肉料理までがつがつ食べてみせるあたりもズラしの妙といえるかもしれない。
そんな本作はコミックス第1巻が2021年7月下旬に出たところ。Web配信ではすでにクローズドになった回もあるので、今から追う場合はまず単行本で入るのがいいだろう。
……ところで。
ここまで書いて今更に気づいたが、おいしいごはんに屈する女騎士コロエで略して“くっコロ”というシャレなのだろうか。なるほど(なるほど?)
©柚子桃,司馬漬け/KADOKAWA