2021.11.16
生活能力がグダグダな20代後半のOLと、彼女を支える家事万能な巨大猫の暮らしを描いた多幸感あふれる日常4コマ漫画!『デキる猫は今日も憂鬱』山田ヒツジ【おすすめ漫画】
『デキる猫は今日も憂鬱』
本日紹介するのは、ニコニコ静画内の講談社ブランド「水曜日のシリウス」で2018年から配信が続く『デキる猫は今日も憂鬱』。
生活能力がグダグダな20代後半のOLと、彼女を支える家事万能な巨大猫の暮らしを描いた多幸感あふれる日常4コマ漫画だ。
思えば、独り暮らしの勤め人は毎日なんとも大変である。
朝起きて会社に出かけて仕事をこなして夜も更けてから家に帰って……。そのうえ家にいる間は炊事洗濯その他もろもろの家事に時間とエネルギーを吸われてしまう。へたすると家から会社へ行くのが億劫なのと同じくらい、家へ戻るのが気苦労になりかねない。
しかし! 本作の主人公・福澤幸来(ふくざわサク)はその名の通り幸運な境遇にあった。独り暮らしをしながらも、帰る家は待つものがいる温もりに満たされているのだ。
彼女を迎える存在、その名前は諭吉(ゆきち)という。ヒトではない。猫である。ただし人間大サイズで直立歩行する不思議な猫さんだ。仔猫のころに命が危ういところを幸来に救われ飼い猫となった諭吉だが、やがて人間に勝るとも劣らないほど賢く器用にすくすく育ち、超がつくレベルですごい家政スキルを習得。
諭吉のおかげで、幸来だけだったらぐちゃぐちゃに散らかりゴミ屋敷になっていたかもしれない家の中はいつもピカピカきれいな状態をキープ。飼い主がよれよれに疲れて会社から帰れば温かいお風呂に放り込み、ビールにぴったりの夜食もちゃちゃっと作るなどいたれりつくせり。
おはようからおやすみまで独り暮らしを見守り続ける、スーパーな“専業主猫”なのだ。
本作の面白さは、諭吉さんの存在が非常にファンタジックでありながらも作品の構成要素は現実の枠組みでまかなわれている点にある。
つまり「仕事と家事を独りでこなさなければならない女性が飼い猫に癒される」というリアルな構図をいったん「仕事をする女性」「独り暮らし」「家事」「飼い猫」「癒し」と分解して、「仕事をこなす独り暮らしの女性が家事をしてくれる飼い猫に癒される」に組み替えたシチュエーションになっているということだ。明るいファンタジーが浮世離れしすぎず、読者が親近感とあこがれを適度に抱くことができる上手い塩梅である。
いいなあ、諭吉さんがいる生活。うらやましい〜……と感じたら、貴方もすでにデキる猫の手のひらの上。この一人と一匹のわちゃわちゃしたライフスタイルを追いかけたくて読み進めずにはいられなくなること請け合いだ。
なお、単行本は2021年現時点で第5巻まで刊行中。配信にない描き下ろしエピソードも多数収録されているので、いまからチェックするなら単行本の一気読みもいいだろう。
©山田ヒツジ/講談社