2021.11.27

女子大生のもとに色々なモノノケがやってくるが、どんな怪異も物理で撃退してしまうオカルトコメディ!『モノのケものぐらし 稲生物怪録異譚』りりうら世都【おすすめ漫画】

『モノのケものぐらし 稲生物怪録異譚』

さて、本日はKADOKAWA「コミックNewtype」で配信中のオカルトコメディ『モノのケものぐらし 稲生物怪録異譚』を紹介しよう。

主人公は一人暮らし中の女子大生で、名を未玲という。住まいはアパートだが、最近どうにも近隣の様子がおかしい。他のアパート住民たちが次々とよそへ引っ越していくせいでやたら静かになった反面、妙な気配が漂っているのだ。

そして、気配の主たちは未玲の前に姿をあらわす。

外へ出ようと手をかけたドアが開かないと思ったら、頭上に醜悪な怪物が出現して鋭い爪をふりかざしてくる。
突然の停電で部屋が暗闇に包まれると、ぼうっと光を放つ無数の生首が宙に浮かび上がる。
しめきった室内で謎の人影がくさやを七輪の火にかけて、煙と悪臭を充満させる。

まさに怪奇現象。直接的な攻撃から微妙な嫌がらせまで、多種多様なモノノケたちがとにかく未玲を脅かしてアパートから追い出そうと企みをめぐらせてくる。

ところが、オバケどもにはひとつの誤算が。
ターゲットにした未玲があまりにもタフだったのである。

ドアをふさいだ怪物はずっしり中身の詰まったゴミ袋でぶん殴り! 光る生首は素手でとっ捕まえて照明代わりに! 部屋で火を焚いた狼藉者は消火器でボコボコに滅多打ち! 強い、この子強すぎる!

脅えない人間と、脅かしたいモノノケ。彼らが織りなすひと夏の物語は、どんな決着を迎えるのか……。

「稲生物怪録」(”いのうぶっかいろく”あるいは”いのうもののけろく”)といえば江戸時代中期の備後に実在した人物が少年時代にさらされた超自然の恐怖体験をとりまとめた有名な古物語。内容をざっくり言えば「一ヶ月間ひとつの場所でオバケたちに脅かされ続けながらも耐えきって最後には怪異のほうが去っていく」というものだ。

そのシチュエーションにならいつつ21世紀現代を舞台にしたことで、“異譚”と副題についたのが本作という次第。「耐えきって」の部分を単に精神的に持ちこたえるだけでなく物理的な腕っぷしで撃退する剛腕さにアレンジしたのがなんとも愉快痛快である。

理不尽な脅しをものともしない未玲の超然とした活躍にはいいぞーやれやれーと応援したくなる一方で、返り討ちにあっては屈辱に歯噛みするモノノケたちの姿にも、これはこれで良し悪しを越えたところで哀れがわき、思わず肩をたたいてやりたくなる。

そうしたパワーバランスの乱しかたとキャラクターへの親しみのもたせかたの塩梅が、本作の楽しさを支える軸と言えるだろう。

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miyamo

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