2021.12.21
女・男・異形のクリーチャーまで、ナンパで憑き物落としをする除霊師が繰り広げる、ホラーギャグ!『100%除霊する男』おのでらさん【おすすめ漫画】
『100%除霊する男』
憑き物落とし、という言葉がある。
悪魔・悪霊・呪いなど負の心霊現象に憑依された人からその元凶を取り除いて救うエクソシズム行為を指す。
今回紹介するWeb漫画『100%除霊する男』の主人公・霊這匠(れいばい たくみ)は、まさにその憑き物落としをおこなう除霊師である。
代金はきっちりとるが、請けた依頼は必ず完遂する凄腕の持ち主。まさに100%除霊する男……なのだが、彼の仕事ぶりを目にした依頼人はたいがい困惑してしまう。
まず、霊這はモテる。すごくモテる。ただしそのモテる相手というのが、幽霊限定なのである。
「こうして君と出会えたのも… 運命なのかもしれないね」
ポンポンと出てくる、歯の浮くような口説き文句の数々。
甘い言葉をささやかれ、幽霊はたちまち霊這に夢中になる。デートに行こう、家にこないか等と誘われれば、最初に憑りついていた人間など放り出して彼にほいほい乗り換え、結果的に依頼人は解放されて除霊完了だ。
ナンパで憑き物落としをする除霊師! ああ、“落とす”ってそういう……。
あれ? でも男の幽霊が相手だったらどうするの?
ご心配なく。100%除霊する男の看板に偽りはない。霊這がナンパの対象とする幽霊は、女・男・異形のクリーチャーまで何でもおかまいなしだ。
さらに、恋愛感情以外にも尊敬の念を抱かせたり、動物霊ならペットのようにかわいがり、声フェチの幽霊(!)がいれば至近距離からいい声を聞かせてやるといった具合に幽霊のタイプに応じたきめこまやかなアプローチを使い分けていくその姿には、プロフェッショナルの流儀がある。
ナンパや口説きの形をとるからコミカルな色がついているが、“荒ぶる霊に対して攻撃的に抵抗して退治するのではなく、愛と和をもって向き合い、魂を鎮めることに専念する”と言ってみればひじょうに高尚なスタンスでもある。
何より霊這はけっして幽霊を口先でだましているわけではなく、本心から霊を好んで声をかけているのである。話数が進んでいくにつれて「ここまでくると立派なヒーローだよなあ」とじわじわカッコよさが分かってきて、霊ならぬ読者も彼に惚れてしまうという次第だ。
最近のエピソードでは除霊師たちが組織だって活動する協会の存在が前面に出てきたり、“七大怨霊”といった気になるフレーズも台詞に上がってきてじょじょに世界観が厚くなっており、直球なホラーエンタメとしての先行きにも期待できそうだ。
なお、連載はニコニコ静画そのほかいくつかのWeb媒体で配信中。単行本は2021年10月に発売された第2巻が最新刊となっている。
©おのでらさん/KADOKAWA