2018.03.14

【日替わりレビュー:水曜日】『ジャヒー様はくじけない!』昆布わかめ

『ジャヒー様はくじけない!』

四畳半一間風呂なし、魔界エリート幼女の苦い生活

やっぱりマンガの「凶悪な力を持つキャラクター」は、へっぽこであればあるほど楽しい。ギャップで人間味が出るからだ。

この作品で登場する魔界No.2のジャヒー様は、権力・魔力・美貌を手にした、魔界中の誰もが畏れ敬う存在。ところが魔法少女によって魔界が破壊された時、彼女の魔力の源である魔石は破壊されてしまったため、すっかりただの幼女になってしまう。

住むのは築四十年のアパート、四畳半一間。夕飯はもやしだけ。風呂がないのでタライに水。かろうじてネックレスとして残していた小さい魔石で、短時間大人の姿になり飲み屋でバイトをする日々。世知辛い。

一方魔界でジャヒー様の手下としてひどい扱いをしていたドゥルジが、人間社会では大成功し、超絶お金持ちになっているもんだから、これまたしんどい。しかもドゥルジは真面目な子なので、ジャヒー様が貧乏なふりをしている「作戦」だと思いこんでいるらしい。世知辛度天元突破、もう勘弁してあげて。

プライドの高いジャヒー様がどんどんオチていく、へっぽこ魔界人コメディ。であると同時に、人情の温かさが深く描かれた作品だ。

ジャヒー様を雇っている居酒屋の店長は、包容力のある女性。ジャヒー様の正体を知った上でも、彼女の苦労をねぎらうために、まかないを帰りに持たせてあげたり、相談に乗ってあげたり、抱きしめてあげたりと、強く励ましてくれる。これにはジャヒー様も、いろんな感情が混ざって涙してしまう。

魔界では誰にも情なんてかけたことがなかったジャヒー様。しかし自分がいざ全てを失うと、他の苦しんでいるものに対して情が湧いてくるもの。巣から落ちた鳥の雛を見つけたジャヒー様は、傷だらけになりながら助け、木を登って巣に返そうとするほどになった。

救いようがない局面に立たされ、プライドで自ら転落してしまうジャヒー様の姿は、人生に疲れた時に読むと、かなりキく。ほんのちょっとプライドを捨てれば、世間はそこまで世知辛くはないものかもね。

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たまごまご

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