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2018.03.06

【日替わりレビュー:火曜日】『ゴールデンゴールド』堀尾省太

『ゴールデンゴールド』

過疎化が進む瀬戸内の島で普通に暮らす女子中学生・早坂琉花(るか)。彼女が拾った御神体らしき彫り物「フクノカミ」に願をかけてから、少女の日常が次第に崩壊していく───。

フクノカミは小学生くらいの大きさの置物で、ペタペタと歩き回る異形の存在です。目や口元は微笑んでいるんだけど、腹の底を見せないような表情もキモいです。
堀尾省太といえば今、アニメ『刻刻』も放映されています。そこに登場する、止まった時の中で裁きを与える管理人(カヌリニ)も独自の風変わりな外見でした。フクノカミの一目見たら忘れられないデザインも、違和感と不気味さを感じて、堀尾省太の作家性を感じます。

さらに読んでいるだけで、

「えっ? それってどういうこと?」

が連発するくらい、意外な展開に翻弄されます。

フクノカミはおばあちゃんたちと食卓を囲んでいて、フクノカミを普通の人間として接しているんですよ。なんか長い舌でお酒をチューチュー吸ってますし……なんなんだコイツは。
変な生き物(?)が住み着く不気味さに恐れを抱く一方、祖母の商売が不自然なくらい繁盛しはじめます。このご利益も、フクノカミの仕業……?
そして時折、取り憑かれたように喋りだす祖母。日常がだんだんフクノカミに侵食されていく感覚にゾッとしながらも、読み進める手が止まりません。

珍妙なフクノカミの外見や話の展開が嘘くさくならないのは、キャラクターの演出やコマ割りを丁寧に描いているからです。

ひとつ例を挙げると第3巻の、琉花がトイレで気絶するシーン。フクノカミの行動にショックを受けて琉花が気を失うんですが、ただ倒れるだけじゃありません。持ち上げていた便座カバーから力が抜けて、バン! と乱暴に便器に落下。そのあと、琉花が白目をむいて半身が傾いていきます。
便座カバーは本筋には関係ないので、省いても話は繋がります。ですが琉花がショックを受けたことの象徴として、大きな役割を果たしています。説得力のある演出だなーと唸りました。
そんな演出の積み重ねがリアリティを持たせることになり、読者は日常に潜む非日常にハラハラしながら物語に入り込んでいくことができます。

拾ったフクノカミのように、ふと表紙が気になって偶然読み始めた『ゴールデンゴールド』。このマンガに出会えたことが、筆者にとってのご利益でした。

試し読みはコチラ!

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この記事を書いた人

かーずSP

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