2018.03.12
【日替わりレビュー:月曜日】『鳩の王』河合あめ
『鳩の王』
これはBL版・鶴の恩返し……?
様々な異種間恋愛をジャンル独特の包容力で包み込んできたBL業界ですが、今回のカップリングは鳩×人間です。
鳥なんですが表題作の攻が寄りによって鳩。鷹とか鷲とかの猛禽じゃなくて、鶴でもなくてハト。
公園で猫に襲われていた鳩を助けたら、恩返しとばかりにその鳩の親分が人間に化けてアパートの窓辺にやってきたのです。
夜にベランダから見知らぬ男がやってきたら普通は通報します。
助けた鳩(のボス)が人間に化けて礼をしに来たといわれても困惑しかありません。
しかも礼という割には態度が尊大です。
大学生の受は、鳩に性格からダメだしされ、なぜか鳩に背中を突かれながらランニングなどトレーニングに明け暮れる羽目に。
読みながら、
「鶴の恩返しのBL版じゃなかったの……なんで機を織ってもらうどころか、恩人がつつかれながら走り込みやらされてんの??」
と脳内に疑問符が乱舞する有様です。
でも一緒に過ごすうちにいつしかお互いに惹かれあって両想いに。
鳥なのに人間仕様の交尾がちゃんとできるのね……と感心するくらい、しっかり充実の肌色シーンです。
このスパダリポッポ、表紙ではイケメンキングな雰囲気なのに、作中ではけっこう天然ボケっぽい感じで、これはギャップ萌えと言っていいのかどうか……と軽く頭を抱えましたが、庶民派の王様というか自治会の会長さんみたいな感じかな、と思えば納得のキャラ。
とにかく、ラブコメなのです。肌色シーンもばっちりあるんですが、ベースがラブコメです。とってもライトに楽しめる異種間恋愛BLです。
お約束の、攻に横恋慕する男も登場しますが、その男ももちろん、鳩です。
恋敵が鳩……。
好きな男と同種族という点で嫉妬などもありつつ、その恋敵もオスなのでそもそも子孫を残す残さないでのアドバンテージなどないので深刻にはなりきらないという、ラブコメの空気を壊さない三角関係です。
表題作の他にカラス&スズメと人間の組み合わせのお話もあり、3話ともいい感じにラブコメ仕様です。
なんというか身近な鳥さんかつ親しみやすい種類を突いてくるあたり、絶妙なチョイスセンスだと思いました。
個人的には、田舎で初恋の相手を待ち続けていたスズメちゃんのお話が、可愛すぎて萌えもだえました。ラブコメといいつつ純愛要素も入っておりますよ!
何も考えずに笑いながら読むと、いろいろデトックスされて気分が明るくなるBLでした。
©河合あめ/双葉社