2018.03.11
【日替わりレビュー:日曜日】『Bread&Butter』芦原妃名子
『Bread&Butter』
全国的に春めいた、良いお天気になった3月11日(日)。
急に冬の寒さになったりと、このところお天気の変動に振り回されっぱなしでしたが、久しぶりの気持ちのいい天気にほくほく気分の方も多いのではないでしょうか。
こんな休日にはピクニックにでも出かけたいもの。そしてピクニックには、パンを片手にぶらりと行くのもオツなものですよね。
ということで、本日は表紙に並ぶ美味しそうなパンが魅力的な『Bread&Butter』をご紹介します(ちょっと無理矢理……?)。
教師を辞め、婚活をはじめたがうまくいかない主人公・柚季は、文具店の片隅でパンを焼く男性・洋一に出会う。出会って二度目の日、柚季は「この人と美味しいご飯が食べたいなあ」と衝撃的に逆プロポーズするが、うっかりOKをもらってしまう……。柚季は洋一のパン屋で働き出し、結婚に向けて二人の生活が始まるのですが……。
ただですね、作者は『砂時計』や『Piece』などなど、心に闇を抱えた登場人物たちがドロドロの人間模様を繰り広げるストーリーがおなじみの芦原妃名子先生。ただの美味しいパンストーリーではもちろんありません。
柚季が教師を辞めるに至った事件や洋一の前職についてや元カノ、家族についての話などが絡み合い、美味しいパンとダークサイドな物語のトーンの対比が物語をぐいぐい進めていきます。常連さんそれぞれのストーリーも名言多し。
でもふと振り返ると、これって他人同士が結婚するにあたってまつわる出来事と思えば、割と普通にあり得る話なのかもしれません……。洋一さんの前職だけちょっと特殊だけど(ネタバレなのでどんなお仕事かはぜひ本編で!)。
それにしても物語の舞台となる、文具とパンの店「原文具屋店」が素晴らしい。どのパンも美味しそうだし、お客さんを思いやるパン作りにぐっとくる。こんなパン屋さんが近所にあったらなあ……。
「芦原妃名子」の過去作
©芦原妃名子/集英社