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2018.03.16

【まとめ】人気作の秘密が垣間見える! あのマンガ家の大ヒット「ひとつ前」の作品

世の中に、数えきれないほど大量のマンガがあふれている今日このごろ。
書店で、ネット通販で、どうしても「今ここにたくさんある中でおもしろい一本は何かな?」と、現時点におけるヨコを広く見回す視点になりやすい。

しかしマンガという存在にガッツリ向き合うには、タテの視点、つまり時間軸も必要だ。

注目したいのは、マンガ家ひとりひとりの歩みである。
初連載でヒットをとばす作家・ヒット作を連発する作家・いまいちふるわない作品のあとに大ヒットをもぎとった作家などそれぞれに独特の道のりがあり、その作品履歴を意識してみることで初めて見えてくるものもあるだろう。

そこで今回は、知名度の高いマンガを生んだ作家について、あえて「ひとつ前」をふりかえってみたい。

古舘春一『ハイキュー!!』のひとつ前『詭弁学派、四ッ谷先輩の怪談。』

『詭弁学派、四ッ谷先輩の怪談。』

『ハイキュー!!』

いまや「週刊少年ジャンプ」を支える柱の一本となった『ハイキュー!!』
情熱とロジックがバランスよく配合されたアツい高校バレーボール物で大ヒットをとばす作者・古舘春一だが、その「ひとつ前」である『詭弁学派、四ッ谷先輩の怪談。』(全3巻)はジャンルが大きく異なっている。

人間の手足を奪う人形、桜の木の下に埋められた少女、こっくりさんの儀式を失敗して異世界に引きずり込まれた生徒、等々。
舞台となる中学校では、恐ろしげな怪談がいくつもささやかれていた。
そんな中、親友が行方不明になって悩んでいた女子生徒・中島真は、とある人物に相談をもちかける。
それは、他人を怖がらせるのが大好きで、”最恐の怪談”の創作を目指す四ッ谷文太郎という留年中学生。
彼は話のタネになりそうな出来事を依頼人から聞き取っては、代わりにその怪奇事件を解決してくれる……という、ホラー色の強いミステリーサスペンスだ。

作者の担当編集がインタビューで語ったところによると古舘氏は最初からバレーボールマンガを描きたがっていたのだが、まずは経験を積んで力をつけようという編集サイドの意向により、本作で連載デビューしたのだという(参照元)。

『ハイキュー!!』の成功ぶりを見ると、その方針は正解だったということになるだろう。

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椎名軽穂『君に届け』のひとつ前『CRAZY FOR YOU』

『CRAZY FOR YOU』

『君に届け』

ホラーじみた雰囲気のせいで他人に怖がられやすいが、実は心優しい超ピュアな女の子が、勇気を出して人間関係をひろげていく少女マンガ『君に届け』
テレビアニメ化、実写映画化とメディア展開も手広かったため知名度は高く、2017年に堂々の完結を迎えた長編作品(2018年3月23日には単行本最終巻となる第30巻が刊行される)。3月23日~4月15日まで、東京アニメセンターにて原画展も開催される。

『君に届け』原画展で、作者・椎名軽穂によるサイン会実施が決定!

その作者、椎名軽穂の「ひとつ前」が、『CRAZY FOR YOU』全6巻。

彼氏いない歴17年で女子高通いの少女・幸(さち)が、親友にさそわれて参加した合コンで出会った男子・ユキに一目ぼれ。
あいつは女癖が悪いと周囲から忠告を受ける幸だったが、いちど火がついた思いは止められず、けなげにアプローチを続けていく。
そこから、ユキが幸の親友・朱美と過去につきあっていて今でも心残りがあるという経緯を軸に、ユキの親友で朱美の今カレ・雄平、同じくユキの親友で幸がユキに想いを寄せる姿に惹かれてしまう栄治をまじえた5人の入り組んだ恋愛模様が描かれる。

片想いの食い違いから人間関係が複雑にからまる物語を描き終えた作者が、次には主人公と想い人が最初からお互いに惹かれ合ってシンプルかつ鉄板な関係を結ぶマンガを描いたという流れが興味深い。

また、『CRAZY FOR YOU』が完結した時点で次作として練っていた構想がうまくいかず、代わりに単行本の尺埋めのために読み切りで描かれた『君に届け』を連載化したら千万部単位の累計発行数を誇る大ヒットになった、という予想外性も面白い。

余談だが、『CRAZY FOR YOU』の人気キャラ・赤星栄治が『君に届け』主人公・黒沼爽子の従兄であるという裏設定があり、2010年刊行『君に届けFANBOOK』では両者が共演するコラボ短編が描かれ、『CRAZY FOR YOU』からの読者を喜ばせた。

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山田芳裕『へうげもの』のひとつ前『ジャイアント』

『ジャイアント』

『へうげもの』

激動の戦国時代、茶の湯や器物の美しさを追求する”数寄者”たちの姿をつづった『へうげもの』
織田信長・豊臣秀吉に仕え、千利休の弟子でもあった武将・古田織部を主人公とし、ひとを一笑させる独特の美学に捧げた人生ドラマが多くの読者を魅了した歴史ロマンマンガである。
これが大ヒットしたため歴史作品のイメージがついた作者・山田芳裕だが、その作品履歴は本来、SFからスポーツまで幅広いジャンルをまたいでいる。

そのなかで「ひとつ前」となるのが、『ジャイアント』という野球もの
日本でプロ野球のドラフト指名も仕事の内定も恋人も失ってしまった巨漢の巨峰貢(きょほう みつぐ)が思いきって子供時代からの夢だったメジャーリーガーを目指し、アメリカへわたる。
なんとかマイナーリーグへ滑り込んだ貢は持ち前のパワーで強打をくりだし、「ジャイアント」と呼ばれるほどの活躍をみせていくという内容だ。

豪快に太い線で、力みと歪みにあふれた人体や表情を表現する山田芳裕の独特すぎるビジュアルはこの時点でも健在。野球のプレー以上に、プレーによって引き出される人間のオーバーリアクションこそが見どころとなる。

作品を前後して見ると、「極端さ」というのが同作者のマンガを読み解くキーのひとつといえるだろう。

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野田サトル『ゴールデンカムイ』のひとつ前『スピナマラダ!』

『スピナマラダ!』

『ゴールデンカムイ』

日露戦争後の北海道を舞台に、一獲千金を求めてアイヌの隠し金塊のありかを追う者たちが死闘の旅路を突き進む『ゴールデンカムイ』
大枠ではシリアスな設定ながら、合間合間でグルメマンガ的な要素を挟んでメリハリをつけ、またマッチョな男たちがちょくちょく可愛らしいリアクションをみせる愛嬌が人気を集め、高い評価を受けている。

作者・野田サトルは北海道の出身で、「ひとつ前」の連載デビュー作『スピナマラダ!』(全6巻)もやはり北海道が舞台である。
東京でフィギュアスケートの優秀な選手だった15歳の中学生男子・朗(ロウ)が、身内の不幸をきっかけに問題行動を起こして苫小牧へ引っ越しを余儀なくされ、転入先の高校でアイスホッケーの魅力を知って転向。
プライドの高すぎる性格で摩擦を起こしながらも、部活で厳しいトレーニングを積んで成長をとげ、所属校にインターハイ優勝をもたらすまでが描かれる。

選手たちが激しくぶつかりあうアイスホッケーの試合シーンを『ゴールデンカムイ』の勢いある戦闘シーンの下積みとしてみると、題材を変えても持ち越される作者の地力のようなものがうかがえて面白い。
ロウが所属する高校ホッケー部監督のエキセントリックな鬼教官ぶりも、『ゴールデンカムイ』におけるキャラクター造形の妙味を彷彿とさせる。

なお、題名の「スピナマラダ」は野田が考えた造語。アイスホッケーのフェイント動作「スピナラマ(スピノラマ、Spin-O-Rama)」に、北海道の方言から「なまら」を組み合わせたものだ。

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まとめ

人に歴史あり、という言葉がある。
マンガ家が作品と年月を積み重ね、試行錯誤しながら前にすすんでいく姿からアツいものを感じとるきっかけとして、「ひとつ前」の作品を意識することは有用だろう。

今この時ホットなマンガをチェックするヨコ視点と、作家の前後の流れをくみとるタテ視点。

このふたつをうまくあわせて、われわれのマンガ読書ライフをより充実させていきましょう。

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この記事を書いた人

miyamo

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