2018.03.23
【日替わりレビュー:金曜日】『藤原くんはだいたい正しい』ヒナチなお
『藤原くんはだいたい正しい』
先月、『藤原くんはだいたい正しい』の5巻が発売されました。生徒会を舞台にした、ゆるキャラ系女子の恋愛奮闘記です。
松本ヒツジは、学校中の人気者。けれどもその人気はあくまで”キャラ”として。恋愛対象としては一切見られていないことに気づきショックを受けるヒツジに対して、生徒会長の藤原くんは「着ぐるみ扱いされたくないなら、されないよう振る舞え」とキツーイ一言。以後、生徒会に属しながら、「恋愛対象女子」になれるよう奮闘するも……?
ヒロインのヒツジは、ゆるキャラ感溢れる、いつだって恋愛対象外に見られるような女の子。絵に描いたようなお人好しで、時にそれが原因で割を食ってしまうところがあるなど、不器用なタイプです。
一方タイトルにもなっている藤原くんは、正論派のクール系男子で、その風貌からとにかくモテるモテる。ヒツジには弟の面影を感じており、だからこそ放っておけないという感覚のご様子。抱く感情は恋愛のそれとは違いますが、それゆえにガードの堅い藤原くんの懐に容易く入っていけるのもまた事実で、ヒツジが他の誰よりも近くにいる女の子になって、物語は進んでいきます。
そしてもうひとり、ヒツジにちょっかいをかけてくるのが、同じ生徒会で藤原くんのお友達・白滝くん。ふわふわした王子様的風貌とは裏腹に、かなり自分勝手で気分屋という、ダークな不思議系男子で、これまた藤原くんと同様に食えない。なかなか難易度の高い男子2人を、ヒツジは相手にすることになります。
美少女でも何でも無い女の子が、タイプの違うイケメン2人の間で取り合いになるという、三角関係もの。
この身分違いの三角関係は、『花より男子』を思い出させるものがあり、作品の設定は全く違うのですが、どこかグッと来るものがありました。格差恋愛を描く場合、「ヒロインが好かれる理由」を説得力がある形で描けるかどうかが大事だと思うのですが、本作はここまで5巻という時間をかけ、丁寧にその部分を積み重ねてきました。
なんかよくわからんけど好かれてる……みたいなことはなく、ちゃんと物語としても納得できるものに仕上がっています。
しかしかなり良いバランス感を保ったドキドキの三角関係ながら、結末はこの作品タイトルで明らかなのが悲しいところ。ここ数年は、当初噛ませ犬ポジションであった男の子が一発逆転する展開を見せる作品が幾つか登場しているのですが、本作はさすがにそのウルトラCを決めるのは難しそうですね……。
しかし白滝くん、本当に魅力的な男の子だけに、非常に勿体無い。他の作品だったら余裕でヒーロー張れるぐらいに、魅力あふれる素敵なキャラなんですよ。もちろんまだ結末が決まったわけではありません。現状五分五分のなか、今後どう物語が展開されるのか。続きが待ち遠しい作品の一つです。