2018.03.26
【日替わりレビュー:月曜日】『花と月』峰島なわこ
『花と月』
ヤクザものBLです。
ヤクザとBLってなんでこんなに相性がいいんでしょうね……。
アングラ感あふれるヤクザ業界では、男同士の主従関係とか組同士のドンパチとか跡目争いとか、とにかく男同士が絡むイベントが多発するせいでしょうか。かくいう私はヤクザBLが大好物です。
今回のカップリングはヤクザの舎弟×潰れかけの組の組長です。
十歳のときにヤクザの菅原に拾われた神埼は、自分を認めて居場所をくれ、育ててくれた恩を返すために、組にというより菅原に右腕としてつくします。しかし、前組長が色々やらかしたせいなのか組は傾き始めていて、その尻拭いのために菅原はあちこちで尻を差し出す羽目になります。神埼は、そんな恩人の置かれた状況に耐えることができませんでした。
他に行き場のない神埼のために、彼の居場所である組を守ろうとする菅原と、居場所をくれた神埼を自由にするために、彼を縛る組をなくしてしまおうと暗躍する神埼は、お互いを思うあまり正反対の方向に頑張ってしまいます。この、通じ合っているようで以心伝心に失敗してるパターンがたまらないんですよね~。
お互いにかなりいびつな執着と愛情を持っていて、特に前半は全体的に狂気じみております。
後半になると、組はもうなく、菅原も神崎もお勤めを終えてカタギとしてシャバで生活していくお話にシフトします。
まさかここで菅原の娘がでてくるとは思いませんでしたが、このお嬢さんがでてきたことで紙面からホームドラマ感が溢れだします。
殺伐としていた前半とはちょっと違った雰囲気ですが、これはこれでまた変わったご家族の同居生活が良い感じに落ち着くまでのお話として楽しむことができるのではないでしょうか。
もちろん、二人が禊を終えていたとしても裏業界と絶縁できているわけでもないので、ヤクザもの的な拉致イベントは発生しますが、前半ほどの退廃的な展開にはなりませんのでご安心ください。
最初の方では、バッドエンド以外考えられないだろう……という展開ですが、後半怒涛の巻き返しがありますので、疲れている時でも安心して召しあがれる仕様になっているかと思います。肌色シーンは控えめですが、物語の空気に浸れる良BLでございます。