コミスペ!

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2018.04.26

【日替わりレビュー:木曜日】『金のひつじ』尾崎かおり

『金のひつじ』

(今日は木曜日担当・園田さんがお休みのため、日曜日からの出張で、コミスペ!編集部がお届けします。)

閉塞的な田舎町で生きる高校生たちの青春を描く、『金のひつじ』。前作『神様がうそをつく。』では、透明感のある鮮やかで切ない小学生の恋物語を描いた、尾崎かおり先生が、現在アフタヌーンで連載中の作品です。

小学生の頃、仲良しの幼なじみだった継、空、優心、朝里の4人組。継だけが引っ越してしまい離ればなれになっていましたが、親の事情でまた幼い時に暮らした山に囲まれた田舎町に帰ってくることとなります。幼なじみたちとの再会を喜ぶ継ですが、しかし高校生になった彼らは昔のままではなく、その絆には大きなヒビが入ってしまっていたのです──。

優等生だった優心は、元市議会議員の父親が起こしたある事件がきっかけで、グレてしまい空を集団でいじめるようになってしまっていますし、昔から優心のことを好きだった朝里は、優心と親しくする継に嫉妬しクラスでハブるように。

あ〜〜〜胸が痛い……。なんでそんなにみんな不器用なんや……と突っ込みたくなるような、読んでて苦しい展開の応酬。

成長するにつれて、環境や考え方の変化から昔の関係のままではいられないという苦しみを、ここには何もないというような田舎の閉鎖的な空気感が後押しして、思春期の少年少女の生きづらさがじんじんと響いてきて、辛い。
物語全体がずっと暗い雰囲気、というワケではなく、コメディタッチな部分であったり、明るい描写も少なくないのですが、その分シリアスな箇所との落差でどっしりくる感じがあります。

閉塞的な環境に疲れ生きることを諦めようと、自殺を図る空を偶然救った継は、

「あの山の向こうにだって街はある 世界はずっと続いてる
我慢して ここで生きていく理由なんて ないんや」

と、空に伝えます。

ことさら仲良し4人組への思い入れが強かった継が、こう場所や人間関係に対して淡泊になれるのは、一度でも外の世界で暮らした経験があるから。狭い世界に捕らわれていた空に対して、一筋の光を提示します。

そして、2人そろって東京へ家出することに。継の父のツテを辿って、ひとまずは暮らすところを確保できそうですが、そこには謎の人物が住んでいました。2巻ではこの人物との交流と東京の生活が描かれていく様子。

だいたいこういう逃避行ってなんらかの理由で失敗して、地元に戻るっていう流れはありがちですが、ぜひ新しい環境での新しい暮らしを見いだして、心機一転、大手を振って地元へ帰ってほしいところですね。

これから展開されていくであろう、各者の心や関係性の再生の物語も楽しみです。

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