2018.05.04

【日替わりレビュー:金曜日】『オネエさんと女子高生』芝生かや

『オネエさんと女子高生』

ここ最近、一気にそのポジションを確立してきた“オネエ男子”。本作もそんな流れを汲む一作です。

物語の主人公は、とにかくクールでドライな女子・高梨明。サックスの練習をするため、放課後ひとり音楽室へ向かうと、そこには女子達から絶大な人気を誇るイケメン王子・織部洋一くんの姿が。見目麗しく、誰とも話さず、その生態は謎に包まれている彼が明のほうに振り返って放ったのは、まさかのオネエ言葉……!?そう、織部くんはガッチガチのオネエ男子だったのです!焦った織部くんはそれ以来、口止め料として明に手作りのお菓子を毎日差し入れするようになり、そこからなぜだかマブダチ認定までしてきて……というコメディ。

オネエ男子とドライ女子

明が誰とも話さないのは、オネエであるということがバレたくないため。見た目にも気を使い、スキンケアやヘアケアもバッチリで、さらには良い匂いをまとっているものだから、喋らずとも女子たちから人気が出るという仕組みなのです。

女子であれば誰もが憧れる織部くんですが、ヒロインの明といえば、織部くんには一切興味無し。というかそもそも人間に興味あるのか怪しいぐらいに、人間関係が希薄なドライ女子で、クラスでも群れず良い意味で孤立しています。

普段はクールで物静かな雰囲気の織部くんですが、その中身は典型的なハイテンションのオネエで、明に対してもグイグイ突っ込んでいきます。最初こそ正体がバレてしまい警戒していたものの、数少ない本音を話せる相手として、いつしか織部くんの方から明にすり寄っていくような関係に。普通の人であればその勢いに圧倒されそうなものですが、明はそのテンションとクドさに若干迷惑そうな素振りを見せるも、マイペースを維持。

はたから見ると全くもって噛み合っていないのですが、結果的に良いバランスが構築出来ているという、不思議な関係が描かれます。

恋愛要素は…?

ちなみに明はオネエですが男が好きだというわけではなく、女の子の方が好き。このシチュエーションであれば、当然そういう方向に話が進んでいきそうですが、明の友達になりたいというクラスメイト(織部くんからしたらそのポジションを争うライバル)が登場したことで、マブダチの座争いが繰り広げられることに。

そのため恋愛の雰囲気はあまり無く、打っても響かないクール女子をいかにして友達として振り向かせるかという、北風と太陽的なコメディが展開されます。

恋愛的な展開は、巻数が進んでから。それまでは、しばしこのヘンテコで愉快な光景を楽しみましょう。

引出しの多さにびっくり

同じ作者さんの『わかばのテーブル』は穏やかで温かい雰囲気が魅力的な作品だったのですが、本作はとにかく出入りの激しいワチャワチャしたコメディとなっていて、その引出しの幅広さに驚かされるばかり。またほんのり青春っぽいエピソードも投入してきたりと、おさえるべきところはしっかりおさえていて、飽きさせないんですよねぇ。

アップテンポに進行する、誰しもが気楽に楽しめそうな、一作。オネエ好きな人も、そうでない人も、まずは試し読みからはじめてみてはいかがでしょう?

試し読みはコチラ!

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いづき

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