2018.06.14
【まとめ】教科書よりも役に立つ!? 歴史上の偉人たちが活躍するギャグ4コマ
今も昔も安定した人気を誇るのが、歴史マンガというジャンル。
圧倒的な画力とスケールで描かれる大河ロマンから、萌えに特化したものまで。異世界転生ものとのハイブリッドで、転生したら昔の偉人になっていたという切り口もありますね。
そして最近は、歴史上の人物が主人公の4コママンガも増えてきています。おそらくですが、『信長の忍び』のヒットも一因ではないかと。
今回はそんな、ギャグ4コマとしてサクサク読める上、いつの間にか歴史にも詳しくなれてしまう一石二鳥な作品をご紹介いたします。
『信長の忍び』
というわけでまずは、テレビアニメ3期が放送中の『信長の忍び』から。
取り急ぎ、今晩開始です!よろしくお願いします! #信長の忍び pic.twitter.com/46UnY4viB7
— 重野なおき@信長の忍び3期放送中 (@shigeno_naoki) 2018年4月6日
数多いる歴史上の偉人の中でも、歴史マンガの題材になる回数が最も多いのは織田信長でしょう。本作は信長自身でなく、信長に仕える女忍び・千鳥の目から見た戦国時代を描いたギャグ4コマです。
主人公の千鳥は、本作だけのオリジナルキャラクターですが、その性能がチートというレベルじゃありません。
敵陣への潜入や諜報活動は朝飯前。戦場でも鬼神のごとき強さを発揮し、剣豪大名と呼ばれる北畠具教との一騎打ちで勝利したことも。信長の戦術も、困ったら千鳥。いっそ戦術が千鳥。おまけにかわいい。
これなんてメアリー・スー?
と思うような設定ですが、ストーリーそのものはかなり史実に忠実。むしろ、「神速」と称された信長の行動力の影には、千鳥のような忍びの活躍があったのだろう、と納得すらしてしまいます。
そして、信長の周辺を描く上で欠かせない人物が、2020年の大河ドラマの主役にも抜擢された明智光秀。もちろん本作にも登場しており、ギャグ寄りの作風ゆえにボケキャラが多い中で、貴重なツッコミ役を務めています。
この光秀が、いかにして千鳥を出し抜いて本能寺の変を成功させるのかにも注目していきたいところ。
『のちの真田幸村である』
真田幸村という武将は、小説やゲームの主人公になるほど人気が高い割に、大阪夏の陣より前に何をしていたのかはあまり知られていません。
そんな幸村の幼少期にスポットを当てたのが、この作品です。タイトルもまさに、『のちの真田幸村である』。
本作では「弁丸」の幼名で呼ばれている6歳の幸村は、勉強が嫌いで、隙あらば屋敷を抜け出して山を駆け回る日々。
しかし、頭は悪いどころかむしろ賢く、遠征中の父親に会うために甲斐(山梨)から三河(愛知)まで出かける計画性と行動力もあったりします。
もちろん、こうした描写の多くはフィクションですが、幸村ならこんな子ども時代を送っていても不思議ではないかもしれません。
また、特筆すべきは、弁丸の愛され体質。純真で、物怖じしない性格の弁丸は、年齢や身分を問わずあらゆる人に好かれています。
武田信玄からは「信繁」の名を賜り、その息子の勝頼には話相手として重用され。徳川家の忍びだった才蔵は、弁丸に会うために真田家に寝返ってしまいました。
史実上の幸村は、上杉家や豊臣家の人質になりながらも、行く先々で家臣並みの待遇を受けていたと言われています。
もしも実際の幸村が、本作の弁丸のような人物だったのであれば、その破格の扱いにも頷けるのではないでしょうか。
『孔明のヨメ。』
三国志きっての天才軍師と名高い諸葛孔明。本作は孔明と、その妻・黄月英が主人公です。
歴史書には不美人だったと書かれていたりするようですが、本作の月英はちゃんとかわいいのでご安心を。また、頭脳の方は孔明の妻にふさわしい才媛で、防衛設備や農具に関する知識では夫をも凌ぐほど。
孔明夫婦が主人公といっても、「三顧の礼」「赤壁の戦い」のような有名なエピソードはまだ登場していません。
孔明は義父から譲り受けた荘園を切り盛りし、月英はそこで使う農具を開発する。仕事面での相性はバッチリですが、恋愛はどちらも奥手で、キスをするのにも恥じらってしまう……。現代に語り継がれている超人的なイメージとは少し違う、等身大の青年としての孔明が描かれています。
つまり、単行本が8巻まで出ているにもかかわらずまだ前日譚の段階なのですが、すでにめちゃくちゃ面白いという。
これもひとえに、杜康潤先生のありあまる三国志愛のなせるわざでしょう。何せ、孔明ゆかりの遺跡を訪れるために中国に留学されていたことすらあるそうですから、時代考証の正確さは折り紙つきです。
情報量、世界観ともに桁違いのスケールで送られる三国志ラブコメを、ぜひ体験してみてください。
『美軍師張良』
古代中国史の軍師・張良は、歴史書にも「婦人好女のごとし」と記されている、いわゆる公式美形キャラ。
本作『美軍師張良』でも、張良は周囲のキャラよりひときわ美人に描かれています。少し顔を近づけただけで他の男性が赤面するという、ちょっと怪しい場面も……。
隣国の秦に祖国を滅ぼされた張良は、秦王の暗殺を決意。家財をすべて売り払って軍資金に変え、同志を探す果てしない旅へと出かけます。
こう書くとシリアスな話のように見えますが、病弱なせいでよく寝込むわ、世間知らずなせいで行く先々でトラブルを起こすわで、一向に暗殺計画は進みません。
じっくり時間をかけて子細を描く歴史マンガが多い中、本作は単行本1巻の間だけで12年もの歳月が経過しています。それでもキャラの外見がほとんど変わらず、テンポよく読み進められるのは、ギャグ形式の4コマならではでしょう。
個人的に印象に残っているのは、1巻終盤でようやく実行された始皇帝の暗殺シーン。残念ながら失敗してしまうものの、その方法が斬新で、
マッチョな男性に巨大ハンマーを投げてもらって馬車ごと潰す
という、孔明と並び称された軍師とは思えないガバガバなもの。
だけどこれ、歴史書にも書かれている史実なんです。まさに、史実はマンガよりも奇なり。
『クレオパトラな日々』
日本と中国の作品に偏ってしまったので、最後は別の地域のものを。
『クレオパトラな日々』では、古代エジプト最後の王朝・プトレマイオス朝を舞台に、肉親同士で玉座を争いあう国家レベルの家族ゲンカが繰り広げられます。主人公はもちろん、世界三大美女のひとりにも数えられるクレオパトラ女王。
単行本には、古代エジプトに関するミニコラムも収録されているため、エジプトの歴史に詳しくない方でも問題なく楽しめます。
ちなみに作中で、クレオパトラが猫耳と尻尾をつけるサービス(?)シーンがあるのですが、これを一概にフィクションとは断言できません。
古代エジプトは、今の日本に勝るとも劣らない猫ブーム。猫の姿をした神様が崇拝されていたり、パミ(エジプト語で「猫」)という名前の王様もいたそうですから、女王が猫耳をつけていても不思議ではないでしょう。
また、戦国ものの割合が多くなってしまうため今回は紹介しませんでしたが、作者の柳原満月先生は、上杉謙信(女体化)が主人公の『軍神ちゃんとよばないで』などの戦国4コマも描かれています。
それらの作品も『クレオパトラな日々』も、一見すると荒唐無稽なのに、ほぼ史実通りに話が進んでいくんですよね……。作者の構成力の高さに感服です。
単行本が発売されている中から、特にオススメしたい5作品をご紹介いたしました。
まだ単行本化されていない作品も、「そこを攻めてきたか」と膝を打つものばかり。聖徳太子を主人公にした『かみびと太子!』(まさる/竹書房「まんがライフMOMO」)や、タイトルから内容は想像してほしい『転生したら蘭丸でした』(真田寿庵/芳文社「まんがホーム」)など。
歴史4コマは、今後も増えこそすれ、なくなることはないでしょう。何せ、これまでの人類の歴史の長さだけ、ネタのストックがあるのですから。
©重野なおき/白泉社, ©真田寿庵/芳文社, ©杜康潤/芳文社, ©秦和生/芳文社, ©柳原満月/竹書房