2018.05.23
【日替わりレビュー:水曜日】『まどからマドカちゃん』福田泰宏
『まどからマドカちゃん』
行き帰りに出会うあの子は、窓の向こう側
会社への行き帰り、会社員の小田が通ると、ある家の窓は開かれる。
中にいるのは、成人女性のマドカ。
彼女は窓から外に向けて寿司のカウンターを設置。小田に無言の圧力で勧めてくるので、しかたなく食べる。めっちゃうまい。
マドカは毎日何かしらネタを振ってくる。窓から部屋の中に向かって撃つ、縁日の射的。窓際に小田の手を乗せてハンドマッサージ。窓の向こうで作ったタイヤキはこだわりの逸品。
部屋の中なのに、アウトドアっぽいこともする。釣り(部屋の中で)に、花見酒(桜は室内に咲いている)などなど。彼女は多彩な人物でもある。お琴もひけるし、陶芸もこなすし、新体操もできる。
小田専用のお店もちょくちょく開く。コンビニ、バー、石焼き芋屋(車は室内)、喫茶店。
3巻ともなると、今日はなにをしているんだろう、程度に小田も慣れてきた。もっとも、窓の向こうでポールダンスを始めたりするもんだから、やっぱり驚く。
かなり変わったコミュニケーションマンガ。マドカは執拗に窓から小田にアプローチするのだが、彼女は基本的にしゃべらない。話しかけているのは、小田の方だ。
マンガ『となりの関くん』は、男子の関くんが一人遊びしているのを、横井さんが勝手に突っ込む、という形式だった。そのため、コミュニケーションが無い回もある。だが、こちらは明らかにコミュニケーションありきだ。マドカは小田に、絡んでほしくて行動している。
ほぼ毎日会っているのに、2人は友人になるでも恋仲になるでもないのが興味深い。
奇妙な関係だが、この特別な距離感が心地よく見えてくる。振り回されている小田も、まんざらではないからマドカのいる窓に立ち寄っているのだ。変な彼女に会えるなら、会社の行き来も悪いもんじゃない。
なお、タイトルロゴは色の部分を追うと、「窓」の字が隠されているので、よーく見て欲しい。
©福田泰宏/講談社