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2018.05.31

【まとめ】外国人から日本はこう見える!? キャラクターの視点が活きる、異国生活マンガ

マンガをはじめとする視覚メディアにふれる時、私たちは何らかの“視点”に立つ。

例えば、一発の強烈なビンタが描かれたとしよう。
それが「殴った場面」となるか、「殴られた場面」となるか。はたまた他人事として「ケンカを眺める場面」となるか。すべては視点の問題だ。
これは私たちがどの立場で見るか選べるということでもあるし、同時に、作品側から「ここはこういう感じ方・考え方をする人物の目を通しているのでこういうフィルターがかかってこう見えるのですよ」と誘導してくるところでもある。

さて。
そのように「○○視点だとどう見えて、どう思うのか」を考えるさい、具体的に分かりやすいモデルとして、外国人キャラクターを経由して自国を見つめ直す作品というのを例に挙げることができる。

今回は日本を舞台にしたマンガから、

・外国人主人公が日本文化を体験するマンガ
・日本人主人公に外国人キャラが異文化視点を提供するマンガ

をピックアップしてみた。

『ニッポンのリア先生』

『グッドアフタヌーン・ティータイム』でも知られる新居美智代先生の作品。2011年から2013年にかけて「Fellows!(Q)」「ハルタ」で連載された全5話を収録した単行本が出ている。

とある中学校に国際交換教師として赴任してきた、米国ラスベガス出身の才媛、リア・ブライト先生。
日本文化に憧れていた彼女は行動力にあふれ、江戸情緒を残した古い家屋を巡ったり、墨まみれになって書道にいそしんだり、思い出の練り切り菓子を求めて和菓子職人のお手伝いをしたりと好奇心旺盛にニッポン生活を満喫していく。

お城や古い建物に白壁と黒壁の色違いがあるのはどうしてか、など細やかなところまで関心を払うリア先生につられて地元の子供や大人たちが身近にある文化風物に改めて意識を向けるという、視点の経由が手堅く描かれている。
外国人キャラクターによるニッポン体験記マンガという意味では非常にオーソドックスで、当記事のトップバッターにふさわしい一作だ。

そんな中で特に強烈な印象を残すのが、リア先生のうけもつクラスの女子生徒、古河さん。

金髪碧眼で豊満美女なリア先生と対比的に黒髪ロングでスマートな和式美人である彼女は「古風」「奥ゆかしい」に偏執的なこだわりをもっており、「14歳で婚約者がいると古風でかっこいいから許嫁になりなさい!」と同級生の少年に言いつけるなど、ぶっとんだ挙動がいちいち面白い。

自分で自分の中の「日本」をこじらせている日本人キャラをコミカルに付け足すことで、海外から来たリア先生が率直に見つめる「ニッポン」の粋を際立たせているところが視点のとりかたとして、一ひねりあってうまい。

『ふしぎの国のバード』

上で紹介した『ニッポンのリア先生』後半が掲載されたのと同じ「ハルタ」第2号(2013年3月)で連載が始まった縁のある作品。
19世紀イギリスに実在した旅行冒険家イザベラ・バードを主人公として、著書『日本奥地紀行』の内容をベースに、彼女が関東地方から蝦夷を目指した旅の足どりをつづる。

時代は明治初頭、開国の過渡期であり、いずれ消えゆく江戸文化を記録に残すというのがバード女史の旅の目的だが、ここでいう記録とは当人の見聞をまとめたレポートである。
つまりそのレポートには「大英帝国の女性旅行家から見た」という“視点”がけっこう強めのフィルターとしてかかっていることになる。
さらに、彼女の旅のお供として通訳者、伊藤鶴吉がフィーチャーされている点も要注目(これも実在の人物)。異なる言語の間に立ってやりとりをする通訳者はその存在自体がひとつのフィルターとなり、もののとらえ方に影響を与えるからだ。

外国人キャラクターの立場上のフィルター。言語のフィルター。そして現代人である私たち読者と140年前の世界に生きる人々という時間軸の距離。

そうした複数の層をくぐって描かれた日本や日本人の表現が、どんなニュアンスを帯びているのかが見どころだ。

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『となりの外国人』

『拝み屋横丁顛末記』の作者、宮本福助先生が太田出版のウェブマガジン「ぽこぽこ」(現「Ohta Web Comic」)で連載していた作品。

地味でおとなしいメガネっ子女子中学生を長女とする、親子四人の平凡な一家のおとなりに、やたら日本ライクな言動が目立つ陽気な外国人青年マリオが引っ越してきたことで幕開けるにぎやかな日々……という異文化交流コメディである。

時代劇で覚えたという江戸っ子口調でしゃべるマリオが、おモチといえば老人を死に追いやる恐怖の食べ物だと思いこんでいたり、コタツの気持ちよさに大はしゃぎしたり、駄菓子屋のおばあちゃんをニンジャと誤解して弟子入りしようとするなど、「中途半端に知っている」ことで起こるシチュエーションの数々がおかしく楽しい。

ただし、手持ちの知識に不足や間違いがあろうとも、全身全霊で日本文化に飛び込もうとするマリオの姿は安易に「おかしい」だけで片づけてはいけないだろう。

文化というのは特定の国や人間そのものにあらかじめべったり貼りついているものではなく、後天的に学習される生活のコードである。

ナマの体験を重ねて学び続けるマリオ青年を、「かぶれ」「にわか」と呼ぶのは失礼にあたるのだ。

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『きんいろモザイク』

いわゆる「きらら系」日常マンガのビッグネームの一角。

主人公・大宮忍は中学時代に英国でホームステイし、帰国後は日本の高校へ入学した。
それからしばらく経ったある日、親友であるホームステイのホストファミリーの娘・アリスが忍との会いたさを募らせ突然来日し、同じ高校の同じクラスに転校、さらに忍の家で暮らすことになる。

いつも仲良くいっしょに行動する二人は、友人である綾と陽子、そして第二の英国少女カレンも加え、まるでアリスの金髪のようにきらめく学校生活を謳歌していく……。
と、基本的にはキャッキャウフフと微笑ましい光景のなかで、登場人物がちょくちょくエキセントリックな言動をかます様子が面白い4コママンガである。

英国や英語に熱烈な嗜好を示しつつ金髪少女マニアという飛び道具な設定まで抱える忍と、大好きな忍が生まれた日本の文化を勉強しまくった結果一般的な日本人の水準を超えた知識を身につけたアリスとの掛け合いにより、「異文化に憧れる」視点がクロスカウンターのごとくくりだされるのが特徴。

こけしめいた黒髪和風少女がイギリス趣味、洋物人形のような金髪英国少女が日本趣味という、互い違いがうまくコメディに回収されている。

全2期にわたるTVアニメ版も人気となり、英語スクールのCOCO塾が英会話の監修に協力したことが注目を集めた。

『光路郎』

「サンデーS」「週刊少年サンデー増刊号」だった、1990年前後に連載されていた作品。
『RED』や仮面ライダー関係のマンガでヒーローアクション方面のイメージが強まった村枝先生だが、いまだ『光路郎』でみせた人情路線の印象が強く残っている世代の読者も多いことだろう。

アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれた金髪青年、光路郎・オハラが海辺の田舎町にある高校へ英語教諭として赴任し、さまざまな事情を抱えている生徒や町の人々に全力で向き合っていく学園マンガ。

光路郎が外見に自己嫌悪をもっていた過去や、母を亡くした経緯から英語と金髪に強い拒否感をもつ妹との関係構築に苦労するなど、根深いコンプレックスの問題までまっすぐとらえた切り口が誠実な内容になっている。

第2部では兄妹がとある目的からアメリカに渡って旅をはじめ、妹のほうが“外国人”になるという、視点の折り返しがある。

なお、本作終了後だいぶ経ってから、光路郎の妹・川越渚が大人になって同じく教師として励む姿を描いた事実上の続編『妹先生 渚』(2010~2014)が「ゲッサン」で連載された。

『弟の夫』

ゲイエロスの巨匠が一般誌で連載をもったということで注目を集め、TVドラマ化まで果たしたマンガ。

小学生の娘を抱えるシングルファザーの前に、亡くなった双子の弟の結婚相手だったカナダ人男性が現れるところから始まる本作は、同性婚・国際婚およびその当事者の家庭関係という題材のもとで、現代日本における社会規範のとある部分が、人間の多様な生き方にもたらすきしみを穏やかなトーンで見つめ、家族のかたちについて深いところから問いなおす名作となった。

そのテーマ上、大小さまざまな偏見をあつかう内容だが、それは文字通りに“視点”をめぐる問題といえる。

エッセイ系

日本という国で暮らすなかに挿し込まれる外国人の視点、という意味でジャンル的な存在感を示すのが、実録エッセイ系のマンガである。パートナーや仕事仲間が外国人で、その言動から日本文化のあれこれを照り返されるという趣向がメインとなる。

あてはまる作品があまりに多いので、さしあたり最近の有名どころを挙げるに留めておくとしよう。

『中国嫁日記』『ダーリンは外国人』はともに国際カップルが日常風景のなかで見出す文化ギャップをユーモラスに描いた作品で、両作の作者夫妻同士で対談が行われたこともある(小栗左多里&トニー・ラズロ meet 井上純一&月 specialカップル座談会)。

『北欧女子オーサが見つけた日本の不思議』は、日本のマンガ・アニメ類に入れ込んで育ち、2011年からは日本で暮らしているスウェーデン出身のイラストレーター・マンガ家のオーサ・イェークストロム先生の体験記。飲食の習慣、仕事、友人関係、はてはナンパのしかたの違いまで多岐に渡るお題が、スウェーデンと日本の文化を互いに対照して描かれている。

『隣のチャイナさん』は、OLの職場風景を題材に、元気で食いしん坊な中国人の同僚女性がみせるユニークな言動を描いたコメディ4コマ。作者いわく「大体事実ちょっぴりフィクションです」とのことで半・実話エッセイという塩梅。

最後に

視点というのは、必ずしも一度に一つ、一人に一つとは限らない。
自分ではない誰かの目を通して物事の見方のバリエーションを増やすことで、当たり前に見慣れていたものに別の角度から向き合い、新たな学びを得ることもある。
上に挙げた諸作品はそのとっかかりとして読むことが可能なものたちである。

ところで、今回はざっくり「外国人キャラクター」とまとめてしまったが、つぶさに見ればそれだって本来は各々個別にいろんな国・いろんな文化に拠って立つ人々なのであり、それ自体が細かく多面的な見方をすべき対象である。

他者の視点を通したつもりで、うっかり「外国人とひとくくりにする視点」に縛られないよう気を付けたいね、という心がけをもって記事をしめくくりたい。

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この記事を書いた人

miyamo

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