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2018.05.31

【日替わりレビュー:木曜日】『1122』渡辺ペコ

『1122』

結婚したからって「めでたしめでたし」じゃない

……まあ、結婚したことがない人間が書くんですが。

昔は、大学を卒業して大きな会社に入れば一生安泰、結婚をして子供を授かれば「しあわせな人生」、そんなスゴロク的な人生モデルがあったんです、という話を聞く。
でもいまやどんなに大きな企業でも、私たちが定年になるまで残っているとは限らなくなり、私たちは「しあわせな人生」を自らアップデートしていかなければいけなくなった。

そんな中、不思議と恋愛市場は大きな変化を見せない。いまだに「婚活」が私たちの人生の必須科目のように語られ、30を過ぎて独身だと「いい人いないの?」と聞かれ(私まだ30になってないけど、多分言われるだろう、という予想)、社会人になって誰かと付き合うとなぜか「結婚を考えている」前提で話が進む。「結婚する気ないなら付き合う必要なくない?」

結婚だけが唯一のハッピーエンドのように思われるのはなぜか。それは多くの物語において、そう描かれてきたから、というのも大きな理由としてあるだろう。惚れた腫れたよりも、結婚してからの人生の方が長いはずなのに、なぜか結婚=人生あがり、ハッピーエンド、のように描かれるものは多い。たぶん、私たちは無意識のうちにそういう甘いコンテンツをばくばくと摂取している。

渡辺ペコ先生の『1122』は、そんな多くの婚活市場や恋愛ストーリーのカウンターのような存在の作品で、ある意味爽快な作品である。

結婚7年目の“いい夫婦”である、相原一子と相原二也。しかし二人はセックスレスであり、夫は妻の公認で不倫をしていた

妻の公認で夫は外で恋愛をする。その代わり外での恋愛は家庭にもちこまない。ふたりはその制度を使うことで、仲良しな夫婦生活を維持していた。それは、離婚をしないため、夫婦生活を続けていくためのものだった。

人と人の付き合いだから、それですべてがうまくいくわけではない。少しずつ、夫婦の間にも、夫と不倫相手との関係にも、歪みが生まれてくる。なんでも言い合えるオープンな夫婦関係だったはずなのに、セックスや子どもの話になると途端に空気が淀んでしまう。溝は深まっていく。

たまに回想シーンで入る、二人の結婚前に出会ったときの話や、夫の不倫相手(彼女は妻子持ちであった)がいまの旦那と結婚いたるまでの話は、いわゆる「結婚がゴールのハッピーエンドな物語」だ。しかしその回想シーンはつかの間であり、それよりもずっと長い「その後の生活」が描かれる。

結婚したら、他の誰とも恋愛もセックスもできない。それが夫婦関係を不自然なものにするなら、それを許してしまうのもひとつの方法である。その考え方が前向きなのか、後ろ向きなのか、それは主人公である二人も悩みながら進んでいるわけだから、ここで断言できるものではない。

いずれにしても、彼らは簡単に関係を捨てないこと(それがまた別のところで人を傷つけるわけだが)を選び、継続するために考えて行動しているのは事実だ。

結婚しても人生は続く。お互いに向き合うことをやめたとき、その幸せはオセロをめくるように簡単に地獄へと変貌してしまう可能性もあるのかもしれない。しかしそれは同時に、その地獄もまた、やり方次第では再び幸せにひっくりかえる瞬間があるということでもある。

胸が締め付けらるような辛い描写が続くが、諦めない彼らの姿にはどこか希望がある

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