2018.06.11
【日替わりレビュー:月曜日】『あなたがふれるものすべて』五城タイガ
『あなたがふれるものすべて』
異世界転生とかではない純ファンタジーワールドの、人間×人外BLです。
戦争で疲弊した国を救うために、癒しの力を求めてエルフの国にたどりついた人間の男・ライノアと、国で望まない結婚を強いられようとしている第二王子・エルフィン。出会ったとたん意識を失ったライノアを気まぐれで飼うことにしたエルフィンですが、飼われている自覚などもちろんないライノアからストレートに、
「あなたが欲しい」
と告白されてしまいます。
なんだかんだで裏表のないライノアに惹かれていくエルフィン。そして、エルフィンと結婚することによって王族の仲間入りをしようとしている婚約者のレアン。
ここまでの登場人物、BLなのでもちろん全員男なんですが、さも当然のように告白したり結婚しようとしたりしています。
誰一人として男同士である点に突っ込みを入れておりません!
……というかこの作品には女性がでてこないんです。「母」「妻」という言葉はあるんですけど、それが女性じゃないことに誰も言及しない世界です。最終的にこの二人、お互いの国を出て駆け落ちしちゃうんですが、その先ですさまじい子沢山ぶりを発揮しております。
そう。ベッドでのギシギシシーンではしっかり股の間に大事なものはぶら下がっていたのですが、それにプラスして妊娠出産機能も備わっていたようです。何の説明もないくらいナチュラルに両性具有です。いっそ潔いですね!
婚約者に逃げられたレアンはというと、なんとその兄で国王のセシルとくっつきました。
というか、セシルが本命だったようです。こちらもしっかり子供をもうけているので、少なくともこの世界のエルフは全員両性具有ですね。
エルフィンとライノアがいなくなった後、実は二重人格だった兄王がレアンと一緒に国を荒らしてしまったりと、結構深刻な状況を思わせる描写があるんですが、その辺の伏線は華麗にスルー。国の危機を救おうとエルフィンを探しに来た元側仕えのユジンは、エルフィンの息子に口説かれて国に戻るのを保留にして同棲を始めてしまいます。
いろいろ大局は大変なんだけど、それは置いといて個人個人はみんな幸せになりました。めでたしめでたし! とまとめる剛腕に惚れそうです。こういうノリ、かなりけっこう大好きです!
©五城タイガ/双葉社