2018.06.13
【日替わりレビュー:水曜日】『上野さんは不器用』tugeneko
『上野さんは不器用』
どんなに科学技術を駆使しても、好きな相手の気は惹けない
先日アニメ化が発表されたこの作品。つり眼三白眼八重歯ツインテールから想像できそうな性格がツボなら、迷わず1巻を買うべし。絶対損しないって言いきれるくらい理想通りだから。
中学校の科学部が舞台。3年生の女子・上野は、2年生の男子・田中のことが好き。
毎日部室に集まって会話する程度には仲がいい。でも上野は彼ともっと近づきたい。彼になんでもいいから(パンツとかでも)興味を示してもらいたい。
ところが上野は極端に不器用なので、正直に言えない。
彼女は謎の科学技術を持つ少女。現代では製造不可能な、なんだかよくわからないすごいアイテムを次々発明する。
それらは全て「田中とお近づきになる」「田中が私に触れてくる」行為を達成するために利用。なんぼなんでも手段が遠回りすぎる。
1巻最初の発明は「ロッカくん」。ドブ川を泉レベルにかえる究極の携帯型濾過装置だ。これを利用して、彼女は自分のおしっこを濾過。
「そういうわけでおしっこ飲め田中」
上野の破綻しすぎた理論は、彼女なりの精一杯の恋心の表現。
「田中が飲まないと意味ないんだよぉ!」
「おまえに飲んでもらいたいからに決まってんだろ!!」
田中がまた非常に鈍い男で、ここまできても何もわかっていない。
上野が「今ほぼ(告白)されてんだよ現在進行形で!」と叫んでも、「エッ! 誰にですか!?」と驚く有様。
上野もさすがに、ぐったり。
「でもあーいうとこが好き!!」
4巻では全裸状態に衣服データを投影する「スケールナイト」を制作。田中の前に完全すっぱだかで登場しつつも、見た目着衣な状態で接触を試みた。痴女か。
ゲームのタッチパット型コントローラーを自身の太ももに貼り付け、触らせようとしたことがある。 相手との接触で味覚が伝わるアイテムを作り、手をつなごうとしたこともある。
飲むと一瞬で眠ってしまい、無意識下で会話ができるようになる薬を作って、彼の本心を聞こうとするシーンの恋する乙女感たるや、(色々アウトなのは目をつぶった上で)大変いじらしい。
彼女の真剣な恋と不器用さは、みんなの周知の事実。次々登場する女の子キャラが、進展ゼロな上野の空回りを見守ったりサポートしたり。
同じ科学部の山下に至っては、完全協力体制なだけでなく、彼女がへたれた時に会話をつなぎ、背中を押し続けている。
不器用でちょっとヘンテコで必死な上野を、田中以外の登場人物と読者全員で愛でまくる作品だ。
©tugeneko/白泉社