2018.06.16

【日替わりレビュー:土曜日】『椿様は咲き誇れない』げしゅまろ

『椿様は咲き誇れない』

「清く正しく美しく」をモットーとし、うるわしい淑女を理想にかかげていつもお嬢さま風の言動に余念がないユニークな女子高生・椿。
そんな彼女が勢いあまってやらかす失敗を、毎回さまざまなお題で切り出す微笑ましい学園コメディが、『椿様は咲き誇れない』である。

原型は作者・げしゅまろ先生がTwitter上に発表したイラストで、それをマンガの形に発展させた本作は現在KADOKAWAのWebサイト「コミックNewtype」で連載中。5月下旬には単行本第1巻が発売されている。

第1話、荷物をめいっぱい詰め込んだ重たいカバンを持ってへとへとの汗だくになりながら登校する椿様。
それでも人前では必死に涼しい顔して優雅な立ち居振る舞いをつらぬき、よし完璧お嬢様キャラを守りぬいた~! と安堵した矢先、肩から提げたカバンがスカートの後ろを巻き込んでずっとパンツ丸見えだったことが分かり大赤面……めげるな、がんばれ、椿様!
と、本作が一体どういう作品なのかという方向性を初回からバシっと分からせてくれるのが素晴らしい。大事ですよねそういうの。

さらに第2話以降は、フランクな距離感で親しみやすいギャル気味JK・藤野さんなど友人キャラによってエピソードが活発化。大真面目なのにズレていたり、自覚していないところで可愛らしさや色っぽさをかもしだす椿様の魅力を他者視点から堪能できるようになり、キャラクター推しマンガとしての充実度が増していく。

また、読者側でもう一歩引いて全体を眺めると、こういう変わり者の女の子が気さくに付き合えるいい友達ができてよかったねえ、としみじみ感じ入る光景も多い。公式のつけた「女子校を舞台に描かれるエモキュン日常コメディー」というキャッチが言いえて妙なのである。

さて、椿様というキャラクターはもともと作者がフェティシズムを満たすべく描いたイラストが由来なので、マンガにおいてもその描写には1コマ1コマ気合が入っていて見ごたえがある。特徴的なのはまずむちむちした肉感の表現だが、個人的には黒髪ロングストレートのツヤツヤさらさらした様子が極めてていねいに描き込まれているところが何よりポイント高い。

「さらっ」という擬音つきで存在感を強調される黒髪の美しさは、お嬢さまイメージに全身全霊をかけている椿様というキャラクターの根幹に直結しているわけで、実際、重要な要素といえるだろう。

そういえば、椿様のお名前はツバキの花の古風な感じをお嬢さまの風情につなげたネーミングだと思われるが、いわゆる「椿油」が黒髪ロングのお手入れに最適な整髪料になるということも思い起こさせる。
椿様は、名前からしてすでに黒ロン的なのだ(?)。

というわけで、“黒ロン美少女”マンガのトレンドをおさえる意味でも要注目の一作です。

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miyamo

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