コミスペ!

SHARE

2018.06.22

【日替わりレビュー:金曜日】『君は春に目を醒ます』縞あさと

『君は春に目を醒ます』

縞あさと『君は春に目を醒ます』の2巻が発売されました。なんていうか好き。もう好き。大好き。好きなんです。(レビューにあるまじき貧困な表現)

まずは『魔女くんと私』の話から

『君は春に目を醒ます』について話す前に、まずは縞あさと先生の前作『魔女くんと私』の話をしましょう。

デビュー単行本でもある『魔女くんと私』は、魔女が現代にも生きているという、花とゆめ的な舞台設定をベースに、当の魔女が「高校生の男の子」で、人懐っこいヒロインと出会い、なんか期せずしてイチャイチャしたりモニョモニョしたりする……という、ボーイミーツガールなストーリー

設定からして秀逸で、そこに淡い雰囲気の可愛らしい絵柄も相まって、終始キュンキュンニヤニヤさせられる良作に仕上がっております。とにかく世間のボーイミーツガール系の作品が好きな輩は、軒並みハート掴まれちゃうだろうという、抜け目のない作品。

ところがこの『魔女くんと私』は、結局1巻で完結。2巻が出ることはありませんでした。

簡単に並んできた

『魔女くんと私』は、何よりもその設定がまず秀逸すぎたと思うんですよ。魔女が男の子で、しかも女の子に触れないと魔法が使えないとか、そんなのラブがコメってロマンスするに決まってるんですよ。で、1巻完結。それを簡単に捨ててしまうという。

勿体ないという想いと同時に、「いや、そう簡単にこれは超えられないだろ」という想いがあったんですよね。次に出てきた作品が多少良かったとしても、さすがに『魔女くんと私』を超えるインパクトはないだろう、と。

で、出てきたのがこちら『君は春に目を醒ます』。それではあらすじを見てみましょう……

小学4年生の絃は同級生の弥太郎にいじめられ泣いてばかり。そんな絃を優しく守ってくれるのは7つ年上の千遥くん。だけど千遥は治療でコールドスリープをすることに…。
──待ち続けて7年後。千遥は目を覚まし、絃と同級生に。憧れのお兄ちゃんから同級生に変化した距離感に、絃はドキドキで!?(白泉社HPより)

コールドスリープで初恋のお兄ちゃんが同い年になって目の前に現れる……はい、こんなの盛り上がらないわけありません。普通に『魔女くんと私』に並んで来ちゃうような、この秀逸な設定。なんですかこの人、バックに腕利きのプロデューサーとかいるんですか。

くすぐったさと酸っぱさ

”憧れ”だったあの感情が、高校生という年齢になって明確に”好き”という気持ちになる、くすぐったさたっぷりな展開。

お兄ちゃん・千遥は、昔のままの距離感で接してくるので、平気で手を握ってくるし、時には抱きしめられたりもするものだから、心臓は高鳴りっぱなし。けれども同時に、自分が全く意識されていないことを思い知らされて落ち込むことも。

どう転んでも胸がざわつく、恋のくすぐったさと酸っぱさの連続で、ドキドキが止まりません(ヒロインも、読者である私も)。

噛ませ犬くんが素敵なんです

そんなアンバランスな関係の2人に割って入るのが、噛ませ犬ポジションの男の子・弥太郎。この子がまたいい味出しているのでぜひプッシュしたい。

小学生の頃、好きだという感情の裏返しで絃をいじめちゃってたという、典型的な馬鹿ガキ。普通はそこからフェードアウトしていくものですが、彼の好きという気持ちは本物で、高校生になっても未だにヒロイン・のことを想っているのだから恐ろしいです。
今となってはいじめていた過去を激しく後悔しているものの、挽回の仕方もわからないものだから、なんか異常に意識しちゃって接するたびによくわかんない感じになる姿が、たまらなく愉快で、可愛らしいのです。

虎視眈々と彼氏のポジションを狙っていたものの、突如現れた強力なライバルを前に意気消沈気味なところもまた可愛い。

すっかり毒は抜けきり、普通にしていればそこそこモテるぐらいには素敵な男の子なのですが、絃への想いが強すぎて突如奇声を発したり落ち込んだりと、その情緒の不安定さから、女子から敬遠され気味。

ああ、このスペックは高いけど残念な感じ、誰かに似ていると思ったら、『ラストゲーム』だ。彼は長い長い片想いを見事成就させましたが、こちらは明確に噛ませ犬ポジション。すなわち成就への道は無いに等しいのです。大逆転があるとしたら、千遥が病気再発して死ぬぐらいのトンデモ展開ぐらいでしょうか。

でも絶対そんなの無いわけで、彼の死に様をとくと見届けたいと思います(ひどい決めつけ)。そんなのわかってても、いや、そんなのがわかっているからこそ、応援したいキャラがいる、そんな感じです。

偏りのあるレビューでしたが

ここまでの文章を振り返ると、『魔女くんと私』と弥太郎の話しかしてないんですけれども、大丈夫ですかねこれ。まあ元々ひとりよがりなコーナーですので、気にしないでおきましょう。何より弥太郎についてこれだけ書けて本当に気持ちよかった。

ちなみに本作の素敵な雰囲気は、試し読みをちょこっと読むだけでもビシッとつかめると思いますので、気になる人はぜひチェックをしてみてください。それでは今回はこの辺で。

試し読みはコチラ!

この記事をシェア!

この記事を書いた人

いづき

このライターの記事一覧