2018.06.23
【日替わりレビュー:土曜日】『ギャル騎士アンジェリカ』トリアイナ, Nagy
『ギャル騎士アンジェリカ』
近年、ギャルをメインの題材としたマンガが盛んである。
恋愛・勉強・遊び……さまざまなシチュエーションで、見ため派手な明るいギャルと垢抜けない相手役の対比がメリハリのある趣を生んで楽しい作品が多く、なかには『ギャルごはん』のように料理マンガとの合わせ技なんてケースも生まれている。
そうしたジャンル単位まで含めた大きな動きがあるのは、ひとりのキャラクターとしてのギャルを描くためには自然とギャルの言動を成り立たせる文化や価値観のような枠組みを背負うことになり、そこへ既存のジャンルを引き合わせれば自動的に「ギャルというジャンル」が受けて立つことになるためだろう。
ギャルをメインに登場させるということは、ギャルの世界観を作中に引き込むということなのだ。
さて、まさにそのジャンル合体という点で極北ともいえる作品が、本日ご紹介するこちら。『ギャル騎士アンジェリカ』である。
題名をぱっと見て往年の美少女ゲームユーザーが一瞬「姫騎士!?」と反応しそうだが、姫じゃないです。ギャルです。ギャル騎士です。すごいパワー感あるタイトルだ……。
もともと竹書房の雑誌「ナマイキッ!」連載作だったのだが、今年3月に同誌が休刊したことで5月から新設された「WEBコミックガンマぷらす」へ移籍。いちおう現時点はWebマンガということで、土曜日のレビュー対象とさせてもらった。
本作の舞台は、ドラゴンが空を飛び交う中近世風ファンタジー世界。
あどけなさの残る少年勇者が頼りない風貌のせいで冒険のパーティーメンバーを集められず困りはてた末に、やむをえず声をかけた相手……それはギラギラの金髪に褐色の肌が人目をひき、むちむちの肢体をぱつんぱつんの胸開けシャツとミニスカに包んだ16歳のギャルで騎士な少女。名を、アンジェリカといった。
ギルドの人間から「誰とでも組むビッチ」「パーティークラッシャー」とささやかれるアンジェリカ。
一つところで数日や数時間ともたず、あちこちのパーティーを渡ってきたことからついた悪評だが、そこにはひとつの秘密があった。
呪いの腕輪を身につけている彼女は、怒りにかられると容赦ない戦闘狂と化して大暴れする業を背負わされているのだ。
そのせいでしょっちゅうパーティーを追い出されてきたアンジェリカ。今また自嘲とともにショタ勇者のもとを離れようとするが、少年は純粋にアンジェリカの強さを讃え、強く引き止めてみせた。
感銘を受けたアンジェリカは留まり、年下なのに20歳と言い張るショタを「センパイ」と呼んで過剰なスキンシップでからかいながら旅を続けることになる。
そこへ、勇者の実家から彼を追いかけてきたヤンデレメイド騎士(アラサー)のレナやらエロエロなサキュバスなのにシスターをやっているキャシーやら、濃いメンツが次々と登場して冒険の旅は騒がしさをきわめていくことに……という内容になっている。
最初にギャル騎士という飛び道具を放りながら、それが出オチではなくむしろ最初のジャブだったというキャラ布陣に構成の妙がある。
おぼっちゃまのパンツを洗った残り湯でお茶を入れて飲むのが日課のメイドなんて危険球を投げられたら、ギャル騎士でも穏当に見えるのはしかたないじゃないですか!
©トリアイナ, Nagy/竹書房