2018.07.16
【日替わりレビュー:月曜日】『月を目指す、星になる』中陸なか
『月を目指す、星になる』
上下巻で学園ものBLで、純愛です。
正統派の学園BLです!
甘酸っぱい! そしてちょっとジュネっぽい!! 尊い!!!
汚れちまった大人が読むと胸がキュンキュンするというか苦しくなるというか、あああああ、こっ恥ずかしいけど目が離せない! となる感じでしょうか。
久々にシリアスで直球な学園ものBLを読んだ気がします。
元野球少年×ピアノの才能はあるけどトラウマで諦めかかっている繊細音楽少年、という組み合わせです。
それぞれにトラウマがあって、それを乗り越えて……というのが物語のベースになっています。
高校生の響は、音楽室で偶然出会った同級生の湊辺に、ピアノを教えてほしいと頼みこまれて何故かきらきら星が弾けるようになるように教えることになります。どこを押したらドが鳴るかもわからないレベルから、2週間で1曲弾けるようになるというハードモードミッションです。
それを何とかこなし、元野球少年の湊辺が響に告白して付き合うことになります。
二人の距離は徐々に縮まっていき、響はトラウマを何とか乗り越え、野球でいうところのメジャーリーガーかというくらいの夢「ピアニストになる」に向かって進み始めます。
そして湊辺は「才能を持っている」恋人の隣に、自分という何も持っていない男がいることがつらくなって別れようと響から距離をおいてしまいます。野球少年だった湊辺は一緒に野球をしていた「持っている」友人がどんどん頭角を現して遠くに行ってしまうのを一度見送っており、またか……という思いに駆られてしまうのです。
この少年たちの葛藤とか、何気ない学校生活とか、はたから見れば「そんなことで?」と思われるようなことが心に深い傷として残っていたりとか、そういう思春期あるあるをまとめて2冊に詰め込みました! という。
ちょっと切なくてノスタルジックで甘酸っぱい読後感をお約束できる気がします。
BL的な肌色シーンはほぼないので、激しいのはちょっと……という方にも安心しておすすめできる仕様となっております。この作品で大事なのは(大事ですけど)そこじゃないのです。大きなお友達は、失われし思春期パッションを思い出してぜひ一緒に悶えましょう。
個人的には現役中高生がこの作品を読んだらどう感じるのかな? というあたりがとても気になります!
©中陸なか/ホーム社