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2018.07.19

【日替わりレビュー:木曜日】『魔法はつづく』オガツカヅオ

『魔法はつづく』

悪夢にうなされる昼寝から目覚めて(なぜか悪夢は昼寝のときに多い)、なんであんな非現実的な世界を信じてしまったんだろう、と不思議に思うこと多々。一緒にいるはずのない人(タレントとか)が私と一緒に遊園地で遊んでいたと思ったら、次の瞬間には人生で数えるくらいしか着たことのないスーツに身を包みオフィスで仕事をしていたりして、と思ったら、包丁もった男に追いかけ回されていたりする。

夢を見ているとき、私はその不思議な世界をすっかり信じて没頭している。夢だと疑わない。覚めたあとも、また怖い夢みたらどうしよう、と怖くなる。「夢は現実じゃない」と、わかっているはずなのに割り切れない。

オガツカズオ先生の最新作である、短編集『魔法はつづく』は、まさにそんな、文字通りの「夢中」を味わうことのできる傑作だった。

最初に先生を知ったのは、劇画狼の「エクストリームマンガ学園」で無料公開されている「よふさぎさま」だったと記憶している。読んで、一瞬で虜になった。

正直、ホラーは苦手だ。心のどこかで作り物だとわかって読んでいる自分がいて、それでもショッキングな描写に振り回される。楽しみ方をいまいち自分の中でつかめていなかった。

ただ、オガツカヅオ先生の作品は、そんな自分のホラー観を一気に覆すものだった。

オガツ先生の描くホラーは、怖い。何が怖いって、気がつくとその世界観の中に没頭して、完全に信じている自分がいるのだ。『魔法はつづく』は、前作『りんたとさじ』『ことなかれ』(作画担当)に比べて、直接的なおどろおどろしい描写は少ない

しかし、そこには確かに、狂気が潜んでいる。それは、たとえばキャラクターの描写であったり、物語の設定であったり、そこには描かれていないものであったり、とにかくずっと不穏な空気感をまとっている。

その一方で、見た目は、ポップな絵柄でとっつきやすく、読んでる最中に「騙された」と気づく(が、時すでに遅し)。

そして、この作品の面白みが、単なる「怖い」だけではないのが、『魔法はつづく』の傑作たる所以だろう。見事な伏線回収、構成の妙、愛らしくて個性豊かなキャラクター、圧倒的に清々しい読後感。どれも一話ごとに余韻に浸りたくなる、捨て作なしの短編集だ。

読んだあとに、心が穏やかになるホラーというのも、なんだか奇妙だ。どこか騙されている気がする。

粒揃いの短編を読み終わり本を閉じ、第一声は「いい夢見たな、怖かったけど」という感じ。これからしばらく、会う人全員に勧めたい一冊。

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