2018.07.29
【日替わりレビュー:日曜日】『呪術廻戦』芥見下々
『呪術廻戦』
次の時代の一翼を担うであろう、すさまじい作品が出てきました。
それは、週刊少年ジャンプでの連載開始後すでに各所で大きな話題となっているホラーアクションマンガ、『呪術廻戦』。
ジャンプ創刊50周年新連載3連弾企画「ジャンプライジング」で『ノアズノーツ』と『ジガ』と共に始まった作品で、マンガ好きからすると今更やろ! という感じかもしれませんが、単行本1巻が今月出ましたのでご紹介させてください。
本作は同ジャンプ連載タイトル『アクタージュ act-age』と共に、「次にくるマンガ大賞 2018」にもノミネートされています。
類稀な身体能力を持つ高校生・虎杖悠仁は、病床に伏せる祖父の見舞いを日課にしていた。だがある日学校に眠る「呪物」の封印が解かれ、化物が現れてしまう。取り残された先輩を救う為、校舎へ乗り込む虎杖だが!?(公式あらすじより)
普通の高校生だった主人公・虎杖が、ひょんなことから「呪い」の存在を知り、自身もほぼ人ならざるものに変化。自身が生き延びるためにも、呪いを祓う存在である「呪術師」を育てる学校「東京都立呪術高等専門学校」へ入学し、戦いの世界へと身を賭していく…というのが大筋。
劇中でも言われますが、主人公がイカれています。昔から呪いに触れてきたわけでもないし、普通の高校生活を送っていたのにも関わらず、異形とはいえ生き物の形をした呪いを一切の躊躇無く殺しにいこうとします。
そもそも、初っぱなからいきなり訳のわからない「呪物」を飲みこんで自分の力としようとしたり、異常な状況に慣れる適応力がやばすぎるのですが、しかし、呪術師にはこのイカれ具合が重要なのです。なぜなら、たとえ才能があったとしても、人から生まれる呪いに対する嫌悪や恐怖に打ち勝てず挫折してしまうこともあるから。
このイカれてる主人公のおかげでお話は爆速で展開され一瞬読者を置いてけぼりにしそうになりますが、読めば読むほど物語に引き込まれていきますし、各キャラの人となりもしっかりと紐解かれていく様子はお見事。
また、こういう主人公をはじめ、メインとなるキャラたちの人間性が歪んでいる作品は、劇中でどういう立ち回りをしてくるか想像がつきづらく、展開がおもしろくなるので好感度高いです。
「呪い」というオカルト的な事象が実在する世界で、呪術を学ぶ学校の生徒たちが化け物や敵と戦うという根幹となる設定としてはこれまでにもあったものですし、また、確かに偉大なる先人たちの作品、『幽☆遊☆白書』や『HUNTER×HUNTER』、『BLEACH』、『NARUTO』などからの影響も感じはします。
しかし、その類い希ないストーリーテリングやキャラクター表現などにより、単なる模倣品とならずに、すでに確固たるオリジナリティを感じさせています。むしろ強烈なヒキの作り方やコマの構成などは、まるでベテランであるかのような風格ですが、作者の芥見下々先生にとっては本作が初単行本作品。まさに期待のニューカマーです。
ジャンプ本誌での物語展開もすさまじく、ネット上でも数多くの賞賛の声が上がっている本作。今後更なる盛り上がりも期待されます。ぜひチェックしておきましょう。
余談ですが、少年ジャンプ+では、本作のプロトタイプであり正式な前日譚とされる、『東京都立呪術高等専門学校』という作品も公開中です。元々は「増刊ジャンプGIGA」で連載されていた全4話の物語で、『呪術廻戦』における設定や世界観、キャラクターが共通しています。
ちなみにこちらは本誌連載ではすでに登場している先輩、乙骨優太を主人公としたストーリーで、担任の五条先生や、同級生の禪院真希、狗巻棘、パンダなども描かれており、こちらを先に読んでおくと本編をさらに深く楽しめるでしょう。
この時点でもすでに作品として完成されきっているのも驚きですが、優太の呪いである、「里香ちゃん」の造形や、純愛の模様に心動かされること受け合いです。
©芥見下々/集英社